〜Part 4 〜 税理士サービス・スタンダード確立の課題 |
全員確定申告が前提となれば、納税者が課税庁とコンタクトする機会も増えます。税務援助を含め、
課税庁の納税支援サービスのあり方が問われてきます。"お客様"である納税者が適正な申告を行えるように、
あらゆる面からの"サービス"の改善が求められてきます。オーストラリアを始めとした先進各国では、
課税庁が「納税者憲章」を発布し、納税支援サービスのスタンダードを明確にしています。
「課税庁が主役」の考えに慣れ親しんだわが国は、完全に遅れてしまっています。 納税者憲章とか、租税手続の透明化とかいう言葉にアレルギーがあるという向きもあるかとも思います。 ならば、「課税庁のサービス・スタンダード」という言葉を使えばいいといえます。 まさに、全員確定申告が前提の時代は、課税庁のサービス・スタンダードが問われる時代といってよいのではないでしょうか。 この面での改革に、国民・納税者の信頼を目指す税理士会の力量に期待したいと思います。 一方、税理士の納税支援サービスは、まったく「市場競争」に委ねられていません。 規制緩和が声高に叫ばれている今日にあっても、"公益性"ないしは"公共性"を理由に、 政府規制により「無償独占」とされています。この強力な政府規制に合理性があるというのであれば、 税理士による専門職サービスが、国民・納税者に広く開かれ、一定の品質管理(QC)された形で提供されていることが 前提となるのではないでしょうか。 全員確定申告が前提となれば、税理士が行う有償の納税支援サービスの利用も拡大します。サービス利用が拡大していけば、 当然、そのサービスの質が問われてきます。税理士と納税者の間で生じたトラブル(苦情)をどう処理すべきなのか。 また、トラブルが生じないようにするために、利益相反の防止や専門家責任を始めとした税理士サービスの 品質管理(QC)をどうすべきなのか。有資格者の継続的な資質点検や苦情処理制度の確立を含め、 高いスタンダードが求められてきます。 現在、税理士会には、綱紀規則などがあり、一定のサービス・スタンダードがないわけではありません。 しかし、現行の規則は、いわば「税理士が主役」といった視点から定められているといってよいわけです。 言い換えると、「納税者が主役」といった視点に欠けているといえます。 全員確定申告が前提の下では、税理士サービスの対象は、企業納税者に限定されません。 広く給与所得者なども対象となってきます。とすれば、税理士会主導で、「依頼人=消費者」 保護の視点に立った新たな税理士サービス・スタンダード(税理士倫理規則)を定めることが不可欠となってきます。 高いスタンダードの確立により、税理士は確固たる専門職の地位と国民・納税者の強い信頼を得ることができるはずです。 政府規制に依存するだけでは生き残りは難しい時代に入っているといえます。 |
前のページへ |
次のページへ |