新世紀へのメッセージ

〜Part 2 〜
  税務援助の課題

 全員確定申告を前提とし、それに対応する場合、 大きく三つの課題があるように思われます。その一つは「税務援助」の課題です。
 しっかりした税務援助(無料相談)制度がないと、大量の確定申告が期日までに完了できないことになりかねないからです。
 税理士会が確定申告期に実施する法定援助は、着実な伸びを記録しているようです。その規模は、 例えば東京税理士会(東京会)をみても、その会員の約半数にまで達しているとのことです。 しかし、無料相談会来場者の実に九割以上が、本来の法定援助対象者以外と聞きます。 その多くは、給与や年金の還付申告者、あるいは高額所得者とのことです。
 東京会は、こうした実態を直視し、平成十二年度から、現実的な対応を実施するとのことです。 給与や年金の申告者を対象とした「広域還付相談」および高額所得者や複雑案件者などを対象とした「有料相談」の制度の導入です。
 東京会の対応は、国民・納税者に開かれた税理士を目指す趣旨からすれば、至極当然のように見えます。 ですが、その根底には、現行の「税務書類の作成」業務の「無償独占」を護るという方針が色濃く反映しているようにも見えます。 「臨税は廃止、税理士会による税務援助拡大で現実のニーズで対応しよう」が本旨であると見てよいようです。
 この方針は、全員確定申告を前提とする時代を見据えて考えた場合には、一時しのぎのようにも見えます。 いずれは、税務援助事業は、税理士会だけでは手に負えなくなるのではないでしょうか。
 そうだとすれば、新世紀には、抜本的な対応が求められてきます。 この場合、むしろ、税務書類作成業務の有償独占化を含めて検討し、税務援助はすべて課税庁に任せてしまうのも一案です。 課税庁は、大量の"無償ボランティア"を使って還付申告を中心とした税務援助を大々的にやればよいわけです。
 この点、全員確定申告が前提で、有償独占の税理士制度があるオーストラリアではそうしており、参考になります。 わが国でも、税務援助事業についての大胆な発想の転換が求められるところです。


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