2025/03/17

少数与党政権は、納税者権利憲章(法)実現に向けた再チャレンジの好機

納税者の自発的納税協力に根差した申告納税制度の健全な発展には、納税者と課税庁の間を「ウイン・ウイン」の関係に構築しないといけない。

こうしたウイン・ウインの関係構築には、「納税者は義務主体であると同時に権利主体である」とするスタンダード(基準)が必須である。いまや西欧型民主主義が根付いて国々ではほぼ常識的なスタンダードである。

これらの諸国では、このスタンダードを保証するために、納税者権利憲章(法)/憲章(法)を制定しているわけである。加えて、課税庁の納税者サービス改善をねらいに、つまり「複雑な税務手続を納税者の目から見てわかり易い形でお知らせするため」 の課税庁のマニフェスト/保証書をアナウンス/配布しているわけである。

かつて、2010(平成22)年前後から、わが国でも、政権交代伴い、憲章(法)制定の機運が高まった。憲章(法)成立寸前までいった。しかし抵抗勢力を排除しきれなかった。「内なる敵」もいた。結果、納税者権利憲章(法)を制定・アナウンスは頓挫した。

財政当局や政党・政治家が、納税者権利憲章(法) 憲章(法)を制定・アナウンスすることに抵抗するのではあれば、それは、西欧型民主主義への挑戦と解してよいのではないか。

確かにいったん頓挫した官製の納税者権利憲章(法)の制定に向けた巻き返し運動は容易ではない。

しかし、2011(平成23)年10月11日に出された「復興増税大綱」(正式には「東日本大震災からの復興のための事業及びB型肝炎対策の財源等に係る税制改正大綱」)のなかで、「納税者権利憲章の策定等(「納税者権利憲章」の作成・公表、国税通則法の名称変更、同法の目的規定の改正)については、見送ることとする」としながらも、「政府は、国税に関する納税者の利益の保護に資するとともに、税務行政の適正かつ円滑な運営を確保する観点から、納税環境の整備に向け、引き続き検討を行うものとする。」と記している。

ただ、この記載においては、納税者の「権利」の文言が意図的に抜かれている。私たち市民/納税者、税務の専門職には、相手が弱いと見れば、降参後もパンチを加えねじ伏せようとする、このシナリオの下書きをした財務官僚の冷酷さが透けて見えてくる。

いずれにしろ、わが国において納税者の「権利利益」を確固たるものにするための国会・政府に納税者権利憲章(法)の制定を求めることは優先的な政治課題である状況には変わりはない。

とりわけ2025年2月18日に立憲民主党(立民)が国会に提出した納税者権利憲章(法)を含む「所得税法等の改正法修正案」および2月21日に、衆院予算委員会での立民の階猛(しな・たけし)議員による修正案を関する質疑報告は、憲章(法)の必要性を改めて再認識させてくれた。

自公連立政権が弱体化する昨今、いまが国会・政府に納税者権利憲章(法)制定を求める好機ではないか。納税者団体や税務の専門職界には、国会を使いこなす作法をしっかり学び、再チャレンジが求められている。

そのためには、まず、法的拘束力あり、既存の法律(国通法)に納税者権利憲章規定を盛り込むタイプ+課税庁がその規定に基づきわかりやすい文体にしてアナウンスするタイプの納税者権利憲章(法)/憲章(法)の成立を議員立法で目指す意思を確認しないといけない。

2025年2月18日に立民が提出した憲章(法)案は、完全なものではない。しかし、納税者支援調整官の法制化が伴えば、わが国で納税者は、名実ともに、単なる「義務」主体ではなく、「権利」主体でもあるとの法認につながる。

課税庁は、「納税者は義務主体」であるとの「文化」を変え、税務行政の現場でも「納税者は権利主体」として丁重な対応をしないといけなくなる。

憲章(法)の1.0案を成立させ、“納税者の権利”の「橋頭保」、「法的足場」を築く。そして、さらに最適な納税者権利憲章2.0、3.0に向けて、民間機関がつくった納税者権利憲章に盛られたアイディアを注入し、切磋琢磨、改良を重ねていくのも一案ではないか。

原理主義的完璧思考はいったん脇に置いて、結果をあげられる賢い戦術、「ディール(取引)」の心得が要る。