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◆兵庫県の公益通報制度は“盗聴器”?
ドイツのナチス政権下、その後の東ドイツでは、市民が赦しを乞うに訪れた教会懺悔室は盗聴器だらけだった。こんなこと、独裁国家、権威主義国家では常識としても、民主主義国家では赦されない。
公益通報者保護法は、報道機関なども通報窓口として定め、一定の要件のもとで通報者への不利益な取り扱いを禁じている。斎藤元彦・兵庫県知事は、自身のパワハラ行為などの告発者捜しに公益通報制度を悪用していたことがわかった。 兵庫県のように公益通報制度を“盗聴器”のように扱う実務は、民主主義国家にはなじまない。県の百条委員会で参考人として意見を述べた山口利昭弁護士は批判した。「文書の存在を知った直後に、誰がどんな目的で書いたのか探索するというのはありえない。法令違反だ」と。
斎藤氏のような資質の人物は、やはり民主主義を大事にしないといけない組織のトップにはふさわしくない。権力を持つとおごり高ぶり、市民や弱者をいたぶるような感覚の人物は、政策を練る仕事をする前に、自らの再教育が必要だ。任意取得のはずのマイナ保険証を国民をいたぶるように強いる御仁や、介護施設や保育園などで弱い入所者や入園者をいたぶる人物も同様である。
◆岐阜県警の市民情報の違法収集・横流しは違憲・違法
岐阜県警大垣署が、岐阜県大垣市での風力発電施設建設に反対する地元の寺の住職ら市民の学齢や病歴、過去の市民運動暦などの個人情報を中部電力子会社「シーテック」に垂れ流ししていた。
この事実をオープンにしたのは、朝日新聞名古屋本社版2014年7月24日のスクープ記事である。この記事では、県警大垣署警備課とシーテックが、複数回にわたり協議した内容の議事録が詳報された。
2016年12月、名指しされた市民4人が原告となり、岐阜地裁に提訴した。警察が目を付けた特定個人の情報を集め、第三者に提供するのはプライバシーや思想・信条の自由、表現の自由を侵害するというのが提訴の理由だ。
岐阜地裁は、2022年2月に、判決をくだした。警察の行為は、プライバシー情報を積極的かつ意図的に提供したのは悪質であるとした。220万円の賠償を命じた。一方、情報収集の違法性は認めなかった。理由は、警察は、万一に備えて情報収集の必要性があったからだという。原告市民は、名古屋高裁に控訴した。
名古屋高裁は、2024年9月13日に判決をくだした。情報収集の違憲性、違法性を指摘して一審岐阜地裁判決を変更し、一部の抹消を命じた。賠償額についても情報収集が警察官の裁量権を逸脱しており、プライバシー侵害は明らかだとして原告請求を認容した。賠償額も、一審から倍増の計440万円とした。
今年8月、名古屋高裁は、無罪判決が確定した男性が捜査時に採取された指紋やDNA型を警察庁のデータベースから抹消するよう求めた訴訟で、データの抹消を命じた1審判決を支持する判決を言い渡した。この判決も今回の判決を書いたのも、名古屋高裁の長谷川恭弘裁判長である。今回の判決を下した9月13日が同裁判長の退職日。警察当局による行き過ぎた情報収集活動を立て続けにとがめた形で裁判官の仕事を終えることになった。
公安警察の行き過ぎた情報収集・配付を厳しく批判した名古屋高裁判決を、原告の市民側は「望みうる中で最高の判決」と高く評価した。
岐阜県警を実質的にマネージしている警察庁(国)は、名古屋高裁の判決には納得しまい。今後、最高裁で争われるのではないか。
鹿児島県警の事例もいまだ記憶に新しい。各地であぶり出される恐ろしき公権力濫用県政をとがめるには、やはり市民のパワーが要る。
2024年9月13日 名古屋高裁判決の要旨
<県警の行為は違憲・違法>
憲法は、個人情報の収集および保有がみだりにされない自由も保障していると解すべきである。これらが侵害された場合に、損害賠償請求ができるのはもちろんのこと、保有している情報の抹消なども具体的な権利として認められる。 県警による個人情報の取得、保有および利用は、著しく社会的相当性を欠き、恣意的な運用が行われていた。県はこれを改めようとはせず、一般的、抽象的な公共の安全と秩序維持を唱えて擁護しようとするばかりである。警察組織内部での自浄作用は全く機能していない。 県は大規模かつ無秩序な「大衆運動」が展開する危険性を秘めているなどと主張する。加えて、県警が行った情報収集活動にも必要性は認められるなどと主張する。しかし、市民運動やその萌芽の段階にあるものを際限なく危険視して情報収集し、監視を続けることが憲法による集会、結社、表現の自由の保障に反することは明らかで失当というほかない。 原告らが行ってきたこれまでの活動を見ても、何ら犯罪性や、公共の安全や秩序に対する危険性は認められない。原告らは適法かつ平穏な方法によって活動していると認められる。風力発電事業に対する反対運動が広がったとしても、公共の安全や秩序の維持が損なわれる可能性は全くうかがわれない。 県の主張は市民運動一般に対する誤った理解に基づく独自の見解と言わざるを得ない。原告らのメーリングリストの内容を県警や中部電力子会社シーテックが入手することは、メーリングリストがそこに含まれる限られた者の通信手段であり、外部に公開されていないことからすると、憲法の保障する通信の秘密を害する行為であると認められる。情報を入手する手段において違憲、違法と言わざるを得ない。 原告らはいずれも県警から違法に個人情報を収集、保有された上、シーテックに違法かつ意図的に個人情報を提供されたことで多大な精神的苦痛を被った。原告に支払われるべき慰謝料額は請求額である100万円を下らず、弁護士費用についても10万円を下らない。
<結論> 県警の収集、提供行為の違法性について1審判決を一部変更し、原告らの損害賠償請求をいずれも請求通り認容し、県の控訴を棄却する。提供情報に基づいて事業者が作成した議事録の記載から特定できる情報の抹消について、県に対する請求を認容し、国に対する請求を棄却する。
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◆兵庫県の公益通報制度は“盗聴器”?
ドイツのナチス政権下、その後の東ドイツでは、市民が赦しを乞うに訪れた教会懺悔室は盗聴器だらけだった。こんなこと、独裁国家、権威主義国家では常識としても、民主主義国家では赦されない。
公益通報者保護法は、報道機関なども通報窓口として定め、一定の要件のもとで通報者への不利益な取り扱いを禁じている。斎藤元彦・兵庫県知事は、自身のパワハラ行為などの告発者捜しに公益通報制度を悪用していたことがわかった。 兵庫県のように公益通報制度を“盗聴器”のように扱う実務は、民主主義国家にはなじまない。県の百条委員会で参考人として意見を述べた山口利昭弁護士は批判した。「文書の存在を知った直後に、誰がどんな目的で書いたのか探索するというのはありえない。法令違反だ」と。
斎藤氏のような資質の人物は、やはり民主主義を大事にしないといけない組織のトップにはふさわしくない。権力を持つとおごり高ぶり、市民や弱者をいたぶるような感覚の人物は、政策を練る仕事をする前に、自らの再教育が必要だ。任意取得のはずのマイナ保険証を国民をいたぶるように強いる御仁や、介護施設や保育園などで弱い入所者や入園者をいたぶる人物も同様である。
◆岐阜県警の市民情報の違法収集・横流しは違憲・違法
岐阜県警大垣署が、岐阜県大垣市での風力発電施設建設に反対する地元の寺の住職ら市民の学齢や病歴、過去の市民運動暦などの個人情報を中部電力子会社「シーテック」に垂れ流ししていた。
この事実をオープンにしたのは、朝日新聞名古屋本社版2014年7月24日のスクープ記事である。この記事では、県警大垣署警備課とシーテックが、複数回にわたり協議した内容の議事録が詳報された。
2016年12月、名指しされた市民4人が原告となり、岐阜地裁に提訴した。警察が目を付けた特定個人の情報を集め、第三者に提供するのはプライバシーや思想・信条の自由、表現の自由を侵害するというのが提訴の理由だ。
岐阜地裁は、2022年2月に、判決をくだした。警察の行為は、プライバシー情報を積極的かつ意図的に提供したのは悪質であるとした。220万円の賠償を命じた。一方、情報収集の違法性は認めなかった。理由は、警察は、万一に備えて情報収集の必要性があったからだという。原告市民は、名古屋高裁に控訴した。
名古屋高裁は、2024年9月13日に判決をくだした。情報収集の違憲性、違法性を指摘して一審岐阜地裁判決を変更し、一部の抹消を命じた。賠償額についても情報収集が警察官の裁量権を逸脱しており、プライバシー侵害は明らかだとして原告請求を認容した。賠償額も、一審から倍増の計440万円とした。
今年8月、名古屋高裁は、無罪判決が確定した男性が捜査時に採取された指紋やDNA型を警察庁のデータベースから抹消するよう求めた訴訟で、データの抹消を命じた1審判決を支持する判決を言い渡した。この判決も今回の判決を書いたのも、名古屋高裁の長谷川恭弘裁判長である。今回の判決を下した9月13日が同裁判長の退職日。警察当局による行き過ぎた情報収集活動を立て続けにとがめた形で裁判官の仕事を終えることになった。
公安警察の行き過ぎた情報収集・配付を厳しく批判した名古屋高裁判決を、原告の市民側は「望みうる中で最高の判決」と高く評価した。
岐阜県警を実質的にマネージしている警察庁(国)は、名古屋高裁の判決には納得しまい。今後、最高裁で争われるのではないか。
鹿児島県警の事例もいまだ記憶に新しい。各地であぶり出される恐ろしき公権力濫用県政をとがめるには、やはり市民のパワーが要る。
2024年9月13日 名古屋高裁判決の要旨
<県警の行為は違憲・違法>
憲法は、個人情報の収集および保有がみだりにされない自由も保障していると解すべきである。これらが侵害された場合に、損害賠償請求ができるのはもちろんのこと、保有している情報の抹消なども具体的な権利として認められる。 県警による個人情報の取得、保有および利用は、著しく社会的相当性を欠き、恣意的な運用が行われていた。県はこれを改めようとはせず、一般的、抽象的な公共の安全と秩序維持を唱えて擁護しようとするばかりである。警察組織内部での自浄作用は全く機能していない。 県は大規模かつ無秩序な「大衆運動」が展開する危険性を秘めているなどと主張する。加えて、県警が行った情報収集活動にも必要性は認められるなどと主張する。しかし、市民運動やその萌芽の段階にあるものを際限なく危険視して情報収集し、監視を続けることが憲法による集会、結社、表現の自由の保障に反することは明らかで失当というほかない。 原告らが行ってきたこれまでの活動を見ても、何ら犯罪性や、公共の安全や秩序に対する危険性は認められない。原告らは適法かつ平穏な方法によって活動していると認められる。風力発電事業に対する反対運動が広がったとしても、公共の安全や秩序の維持が損なわれる可能性は全くうかがわれない。 県の主張は市民運動一般に対する誤った理解に基づく独自の見解と言わざるを得ない。原告らのメーリングリストの内容を県警や中部電力子会社シーテックが入手することは、メーリングリストがそこに含まれる限られた者の通信手段であり、外部に公開されていないことからすると、憲法の保障する通信の秘密を害する行為であると認められる。情報を入手する手段において違憲、違法と言わざるを得ない。 原告らはいずれも県警から違法に個人情報を収集、保有された上、シーテックに違法かつ意図的に個人情報を提供されたことで多大な精神的苦痛を被った。原告に支払われるべき慰謝料額は請求額である100万円を下らず、弁護士費用についても10万円を下らない。
<結論> 県警の収集、提供行為の違法性について1審判決を一部変更し、原告らの損害賠償請求をいずれも請求通り認容し、県の控訴を棄却する。提供情報に基づいて事業者が作成した議事録の記載から特定できる情報の抹消について、県に対する請求を認容し、国に対する請求を棄却する。