2009/06

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2009/06/26

在留外国人に住民票コードをつけるなど、「在留外国人監視強化3改正法案」衆院通過に異議あり!!

                      PIJ社会保障カード反対プロジェクト                                                               

◆在留外国人管理強化3改正法案に異議あり!!

2009年6月19日、衆議院で、「在留外国人管理強化3改正法案」、が修正の上、可決された。3法案とは、次のとおり。

(1)総務省が仕上げた「住民基本台帳法(住基法)改定案」

(2)法務省が仕上げた「出入国管理及び難民認定法(入管難民法)改正案」

(3)法務省が仕上げた「本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等 の 出入国管理に関する特例法(入管特例法)改正案」

 これら3法案は、「外国人の公正な管理」とともに「適法に在留する外国人の利便性の向上」がねらいとされる。しかし、実際には「在留外国人(外国籍者・外国人住民)」を権利主体と認めず、管理をより一層強化する内容となっている。

 また、自治体が外国人住民に対し提供する住民サービスの事務処理の基礎を築くことにあるとされる。しかし、内実は、外国人住民に対する自治体の事務処理制度を入管制度に従属させることにある。    さらに、これら3法案は、日本人と在留外国人の一元管理をめざす「社会保障番号カード」制度導入の土台となるものである。

 今わが国に求められているのは、在留外国人(外国籍者・外国人住民)を、排斥や管理・監視の対象として取扱う法制度ではない。これからの日本社会のグローバル化に向けて、在留外国人(外国籍者・外国人住民)が、日本社会の一員として生きていくことができるための制度づくりである。

 だが、現実は、国は、在留外国人(外国籍者・外国人住民)行政でも、自治体の国への追従を求め、与党も民主党も、「国民・外国人監視万歳」を叫んでいる情けない状況にある。

◆在留外国人管理強化3改正法案のねらい

 これらの改正法案の内容を、やさしく説明すると、次にとおり。

 (1)【外国人登録証の廃止】「在留外国人(外国籍者・外国人住民)」について、これまでの「入管難民法」と「外登法」による二元的管理をやめ、「入管難民法」 だけの一元的な管理に変更する。つまり外登法は廃止される。したがって、これまで自治体が交付していた『外国人登録証』が廃止される。

 (2)【新たな(a)『特別永住者証明書』(特別永住者向け)、(b)『在留カード』(ビジネスや留学などでの中長期在留者向け)の交付制度の導入】

 (3)【これら「在留外国人(外国籍者・外国人住民)」を住民基本台帳に記載し、住民票コードを振る】

 (4)【「外国人住民」であるかどうかは、入管難民法の在留資格によって判断する】住民基本台帳法上の外国人住民票記載事項が入管へ提供される。在留カード番号、住民票コードを検索キーに使ったデータ照合による、徹底監視が可能になる。

◆在留外国人のあらたな分類

 これら3改正法案が実現すれば、「在留外国人(外国籍者・外国人住民)」は、次の3つに分類される。

 (1)【特別永住者】在日コリアンなど旧植民地出身者とその子孫〜入管特例法に基づき(a)『特別永住者証明書』が市町村を通して交付される。住基ネットに組み込んで監視。

 (2)【中長期在留者】在留期間が3カ月を超す外国人で、特別永住者を除く〜入管難民法基づき、入管が(b)『在留カード』を交付する。住基ネットに組み込んで監視

 (3)【非正規滞在者】非正規滞在者、難民申請者など〜(b)『在留カード』を交付しない。住基ネットに組み込まれない。

 この3法案が成立すると非正規滞在者や難民申請者、さらにはその家族の多くは「自治体の住民」から差別・排除され、社会の片隅に追いやられ、“無権利者”と化す。

◆IC仕様の『在留カード』の携帯や監視・罰則強化の仕組み

 新たな『在留カード』を使った監視システムにより、ビジネスや留学などで中長期間、日本の在留する外国人を徹底監視する仕組みだ。

 (1)【在留カードの記載事項】『在留カード』には、顔写真・氏名・生年月日・性別・国籍・住居地・在留資格と期間・許可の種類・就労制限の有無など、詳細な個人情報が記載され、ICチップにも記載される。

 (2)【所属機関等に関する届出】中長期在留者は、所属する機関(研究機関・教育機関・企業・研修先・興行先など)が、名称変更、所在地に変更、消滅、当該機関から離脱ないし移籍、当該機関と新たな契約をした場合などには、その旨を14日以内に法務大臣(入管)へ届け出なければならない。

 (3)【所属機関等の届出義務】中長期在留者を受け入れている機関は、受入の開始・終了・受入状況について、法務大臣(入管)へ届け出なければならない。

 (4)【在留資格の取消】中長期在留者が住居地を変更したときなど、必要な届出がなかった場合には、その在留資格を取り消すことができる。

 (5)【在留資格の取消】日本人ないし永住者の配偶者等の身分を有する者として在留する者、在留目的の活動を継続して3ヶ月以上行わない場合も、在留資格取消の対象になる。

 (6)【在留資格の取消】中長期在留者は、記載内容に変更がある場合に、入管・市町村に届け出なければならない。虚偽の届出義務違反に対しては刑事罰を科す。

 (7)『在留カード』の常時携帯および官憲等からの求めに応じて提示することが義務づけられる。

◆IC仕様の『特別永住者証明書』のよる監視強化の仕組み

 新たにIC仕様の『特別永住者証明書』を使い、特別永住者(在日コリアンら)の管理を徹底する。

 (1)特別永住者(在日コリアンら)向けには新たにIC仕様の『特別永住者証明書』を発行する。

 (2)このICカードには、顔写真のほか、国籍(地域)・住居地・生年月日等を記載し、ICチップにも記載する。

 (3)記載事項に変更が生じた場合には届出が必要。届け出遅延や虚偽届け出には刑事罰が科せられる。(ちなみに、09年6月19日の衆院法務委員会で、3党修正により特別永住者に新たに発行する『特別永住者証明書』の常時携帯義務は削除された。)

◆今後、外国人住民基本システムを整備、効率的な監視へ

 今後、国は、全国市町村をつなぐ外国人住民基本システムのオンラインデータベースを整備。在留外国人(外国籍者・外国人住民)の出入国から転出・転入、在留資格の変更・期間更新・永住権取得と、労働・社会保険の加入有無、国・地方税支払いなど雇用・労働、社会保障に至る広範な情報を国が一元管理する方向へ進むのではないか。

◆社会保障番号カードにつながる「外国人監視強化3改正法案」

 自民、民主が、国取り合戦を演じている背後で、役人がうごめいている。住基ネットでは、本来、“データ監視国家3点セット”〜(a)〔分散管理型の国民情報管理のナショナル・データベース(地方自治情報センター)、(b)背番号コード(住民票コード、マスターキー)、(c)国民登録証ICカード(住基カード、検索マスターキー・カード)〕〜の実現を目指していた。

 ところが、このうち、住基カードを“任意取得”としたために、(c)国民全員に身分登録証(ID)カード〔住基カード〕は普及しない。住基ネットは、欠陥システムと自認。

 で、いま、役人は、健康保険証などのICカード化を装い、国民が逃げられないサービスをターゲットに、“社会保障カード(仮称)”のネーミングで、在留外国人(外国籍者・外国人住民)を含む、「国民全員に身分登録証(ID)カードを」持たせようとしている。これにより、(c)住基カードの実質的な“強制取得”に道を開こうとしている。

 現在、在留外国人は住基ネットから外れている。彼らを住基ネットに組み込み、住民票コードを振らないと、徹底した“監視システム”は構築できない。

 まさに、特別永住者(在日コリアンら)や中長期在留外国人を住基ネットに組み込む「在留外国人管理強化3改正法案」の成立は、漏れのない監視システムであう「社保カード構想」を実現させるうえで要となるものといえる。

◆社保番号カードを使った「電子監視収容所列島化構想」の愚

 トータルな監視社会、社保番号カード(IDカード・身元登録証カード)を使った「電子監視収容所列島化構想」が政府与党のいう“安全・安心社会”構想であるとしたら、絶対に受け容れられない。まさに、国内版パスポート、現代版通行手形そもの。“通行手形なしではお使いにも出歩けない社会”が待っている。

 厚労省が練っている「社保カード」構想では、おぎゃと生まれた赤ん坊に国がカード発行し、自治体が交付する。自治体が発行するわけでないから、自治体は抵抗できない。「地方自治などどうにでも料理できる」が、国の役人の本音だろう。

 また、住民も“社保カードは要らない。受け取らない”と拒否できない。健康保険証カードを兼ねているから、「こんなもの要らない」といったら、医者にもかかれなくなる。一方。医者にかかれば、国が実質的に管理するデータベースに医療情報がどんどん蓄積する。“公益”を楯にした「自動徴兵選抜検査」も、検索キー(住民票コード、社保番号)を使えば、いとも簡単にできる国家像が見えてくる。

 役人は、社保番号とICカードを使って、国民のプライバシーを根こそぎ公有化する画策をしている。だが、こんなものゆるしたら“負の遺産”となるのは明らかだ。将来に禍根を残す。また、各個人の自己情報のコントロール権は“風前の灯火”と化す。

 「社保番号を納税者番号に」とか叫んでいる、民主党の古川元久議員(元大蔵省役人)とか、管理主義者が“政権交替”で台頭してくるのはまずい。自由のない「民主党」の考え方が問われている。

 在留外国人管理強化3改正法案を、「在留外国人問題」と“放置”するのは危険だ。まわり回って「日本人の問題」になるのは必至だからだ。

 一方、自由人権協会なども、在留外国人管理強化3改正法案問題を、住基ネットや社保カード問題とリンケージして考える視点が求められている。外国人の人権は考えるけど、住基ネットや社保カード問題とはかかわりたくない、とはいくまい。人権団体としての姿勢が問われている。

                        2009年6月

2009/06/20

河村たかし名古屋市長、「住基ネット有用性」市民アンケート調査実施へ

【河村たかし名古屋市長、 「住基ネット有用性」市民アンケート調査実施へ】

名古屋市の河村たかし市長は、2009年6月12日に、市長マニフェストに従い、住基ネットの有用性に関する調査を実施すると発表した。調査は、無作為抽出した20歳以上の市民2千人を対象に、郵送で実施する。

市長は、かねてから、年間1億3千万円近くも維持費がかかる住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)の有用性に疑問を呈している。今後、市財政の健全化・ムダ遣いの洗い出しなどの観点、市民の人格権保護の観点などから、切断を含め、検討をすすめる方針だ。

また、同日、「住基ネット差し止め訴訟を進める会・東海」からの「申入れ書」を受け取った。

2009/06/16

◆「朝日新聞」が“納番賛成”へ変節

◆「朝日新聞」が“納番賛成”へ変節

 朝日新聞2009年6月14日(日)「社説」“納税者番号”で、「導入へ不安解消の議論を」と、従来の納番導入消極論から、導入賛成へ大きく舵を切った。背景には、民主党の「納番と給付つき税額控除」セット導入論を支援するねらいがあるものと思われる。

 朝日新聞は、2009年1月22日朝刊「オピニオン」に、元財務省の役人で「納番賛成論者」の中大法科大学院教員の森信茂樹氏の意見を掲載したころから、様子がおかしくなった。

 その後、2009年5月4日朝刊社説「行政のIT化 政府全体で考えねば」社保番号、社保カードについて、今後の”変節“があるうることを匂わせていた。ただ、その賛否については明確にしていなかった。

 ところが、前記6月14日の社説では、番号制度導入賛成への姿勢を明確にした。同社説いわく、「納税者番号制には管理社会化の一面はある。しかし、社会保障を充実させるには、乱用の防止を前提にして導入せざるを得ないのではないか。」と。何の「乱用」防止かは意味不明な文章ではある。

 仮に民主党や自民党などが提唱する「社保番号=納番の乱用」防止をいうのであれば、“いったんこれの導入をゆるせば、歯止めはできない”といことを、肝に銘じるべきである。言論界の責任は重い。

                                Profish

《朝日新聞、番号制導入賛成へ向けた“変節”の最近の経緯》

・2009年06月14日朝刊:【社説】納税者番号 導入へ不安解消の議論を

・2009年05月04日朝刊:【社説】行政のIT化 政府全体で考えねば

・2009年02月11日朝刊:【ニュースがわからん!】納税者番号制が浮上しているが? 所得などを把握しやすい

・2009年01月22日朝刊:《オピニオン1》【私の視点ワイド】納税者番号制度 受益 の観点から議論が必要 森信茂樹

2009/06/12

行政不服審査法改正案は“国民の利益を守る内容??”

朝日新聞2009年6月11日朝刊「オピニオン」の欄に、旧総務省でお役人をされていた増島俊之氏(現聖学院大学客員教員)の「行政不服審査法:国民の利益守る早期改正を」の意見が掲載されていた。 

 増島氏いわく、「役所の不当な権力行使から国民の権利と利益を守り、役所の仕事の適正化を図る行政不服審査法の改正案が昨年国会に提案された。しかし、継続審議とされ、今国会でも審議されないまま廃案の雲行きにある。」ことを危惧し、早期の改正実現を促す内容だ。

  また、同氏は、「今回の改正案は、▽手続きはすべて「審査請求」に一本化▽客観・公正な審査と判断を確保するため、審査にかかわる「審理員」を置いて審査し、第三者機関の不服審査会がチェック▽審査を不当に遅らせないための標準処理機関の設定〜〜することになった。分かりやすさ、客観性と公正性の確保、迅速な処理といった観点から優れた改革案である。」と賛美する。

 さらに、同氏は、同法案は、「国民の権利、利益の保護と役所の仕事の仕方を大きく変える。それなのに与党は立法の努力を怠り、民主党も同法案を取り上げることがない。」と嘆いておられる。

  だが、租税事案の審査請求を担う「国税不服審判所」の現状を見てみても、今回の改正案が実現したとしても、第三者裁決機関である国税不服審判所が、真に“納税者の権利利益を守ってくれる機関”に大きく変る展望などはまったく見えてこない。相変わらず、租税行政庁の職員が審理員(審判官)の大半を占め、審判所は「課税庁の御用聞き」に終始する姿しか想像できない。

  このことからもわかるように、問題は、相変らず審理員(審判官・専門員)に、同じ省庁の行政官を任用する原則を貫き、“怪しげな独立性”を強調し、“役所が主役”の姿勢を貫いている改革案の“中身”にある。また、法科大学院が誕生し、法曹が毎年誕生する時代にいたっているのにかかわらず、審理員に、行政官に換えて、なぜ外部からこれら“法曹”、さらには、その他の専門職(税理士、公認会計士、医師など)を、積極的に任用する大胆な改革をしようとしないのかである。

  イギリスは、8年をかけて、行政審判所の抜本的改革を実施した。これまであった70種類あまりの個別の審判所を整理・統合し、新たに二進級制の“総合審判所”を誕生させた。6つの部からなる「第一段階審判所」と、3つの部からなる「上級審判所」である。これら二進級の審判所は、法務省が主管し、縦割りの省庁から完全に独立した審判所である。審理員は、縦割りの役人とはつながりのない外部から任用された法曹や専門員などである。新審判所は、2009年4月1日に船出した。

  わが国の行政不服審査法の改正案(行政不服審判所制度見直し)の“中身”を問い直す手がかりを得るためにも、CNNニューズ58号では、石村耕治PIJ代表に依頼し、イギリスの抜本的審判所制度改革についての紹介を掲載する予定。

 (ちなみに、58号は7月発行の予定。HPアップは、10月下旬、早読み希望の方は、是非とも会員になって欲しい。)                                             2009年6月12日                                                   CNNニューズ編集局