2011/12/17

国税通則法の超改悪、納税環境を破壊する官主党

世界の名だたる国々では租税手続改革を実施し、納税者権利憲章を公にして、納税者の権利を尊重する税務行政におおきく舵を切っています。民主党政権も、こうした世界の趨勢に遅れまいとして、政権公約(マニフェスト)で納税者権利憲章制定を打ち出しました。

わが国の課税庁は強力な権限を有しているのにもかかわらず、納税者はそれに対峙できる十分な権利が保障されていないわけです。こうした状況を改善するために、国税通則法を改正し納税者に手続的権利を制度的に保障するとともに、その内容を納税者にわかりやすく説明するために「納税者権利憲章」、「納税者権利保障法」、「納税者権利宣言」など(以下「納税者権利憲章」)を制定・発布しようというのが民主党の方針でした。

ところが、「租税手続改革」が、いつの間にか「納税環境整備」という方向にシフトし、役所主導でつくられた当初の国税通則法改正法案(当初案)は、課税庁の権限強化、納税者の義務強化一色の内容になっていました。それでも、当初案には、納税者権利憲章を制定する方針は堅持されていました。

当初案は、平成23年同税制改正法案に盛り込まれ、2011年1月に始まった通常国会に上程されました。しかし、3.11東日本大震災の影響で審議がストップし、6月に、日切れ法案の延長などを延長する内容の法案と、それ以外の法案に2分割され、前者のみが成立しました。

その後、残りの改正については、民主党・自民党・公明党の三党で協議が行われ、修正のうえ合意にいたりました。修正点は、10月11日に「復興増税大綱」(正式には、「東日本大震災からの復興のための事業及びB型肝炎対策の財源等に係る税制改正大綱」)に盛り込まれ公表されました。

この協議でまとまった修正国税通則法改正法案(修正案)は、一言でいえば、ほとんど課税庁の権限強化と納税者の受忍義務強化を軸にした「超改悪」の内容です。

「罰則付きでの帳簿書類等の提示・提出の義務化」、「提出した帳簿種類等を留め置き(領置)する権限の法制化」、「税務職員の修正申告の勧奨/慫慂権限の法制化」、「更正の請求を罰則付きで1年から5年に延長」、「零細な白色申告者(所得額300万円以下)への記帳の義務化」、「無予告調査の法制化」等々。まさに、こうした改悪案を通す民主党は、財務省のいいなりの「官主党」です。

一方、民主党が先の衆議院選挙時のマニフェストで公約した納税者権利憲章の制定は、当初案に盛られていた「国民の権利利益の保護を図りつつ」の文言挿入とともに、全面的に見送られました。

その後、復興増税大綱に盛られた改正項目は、「復興増税法案」(正式名称は「震災復興財源確保のための税制措置法案」)と「平成23年度修正税制改正法案」(正式名称「23年度税制改正法案から分離継続審議とされていた法案の修正法案」)などに分けられ、11月に始まった臨時国会に上程されました。修正国税通則法改正法案は、11月30日に平成23年度修正税制改正法の一部として成立しました。

この国通法の超改悪について、税理士でもある参議院財政金融委員長/民主党税制調査会副会長の尾立源幸(おだちともゆき)参議院議員(大阪出身・民主党)は、ある中小企業者の会合で“豊かな納税環境の整備に取り組んだ”結果だとか??・・・・この御仁、ほんまにそう思っているのだとすれば、政治家として、そして専門職として大きな疑問符がつくのではないでしょうか?「誠実さに欠けている」としかいいようがありません。

公務員や議員定数や給与などの削減はまったく視界不良で、「消費税2倍増」、「ダムや高速道路の建設再開などコンクリート国家への逆走」等々、政権公約は、いまやただの紙切れです。・・・・・そして、今回の国通法超改悪、閉そく感だけがただよう世相です。暗すぎます。もう一度政権交代が必要ですね。

本物の税の専門職