政府の新IT成長戦略では、医療分野でのIT化推進を打ち出し、新たにつくられる共通番号で国民全員の過去の診療履歴をナショナルデータベース(DB)化し、国民IDカードで、全国どこの病院でも見られる仕組みを構築しようという方針も明らかにしている。IT企業や製薬会社などには美味しい話かも知れない。しかし、プライバシー保護の観点から一言でいえば、この愚かな戦略は、“私たち国民全員の生涯病歴・医療情報(lifelong medical records)を公有化し、国家が番号管理しよう”という稚拙で危険極まりない構想である。いい加減にして欲しい。
イギリスでは、今年(2010年)5月に新連立政権(保守党・自民党連立;Lib-Con Coalition Government)が誕生した。この新政権は、人権を蝕む国民ID【登録証】カード制導入へ逆走するわが民主政権とは対照的に、「国家が必要以上に国民の個人情報を収集しない政策」を打ち出した。そして、前労働党政権下で導入した国民IDカード(National ID card)制を、“恒常的な人権侵害装置”であるとし、政権奪取後に廃止を決定した。5月27日に、「IDカード制廃止100日プラン」を公表し、現在、英議会下院で廃止法案を審議している。頭を冷やして投票したイギリス国民は賢い!!
6月29日に、政府の「社会保障・税に関わる番号制度に関する検討会」(以下「共通番号制度検討会」)は会合を開き、「中間取りまとめ」を公表した。(1)「共通番号候補」として、1.基礎年金番号、2.住民票コード、3.新たな番号の3つの素案を示した。一方、(2)「番号の利用範囲案」としては、1.税務にのみ利用(ドイツ型)、2.税務と社会保障に利用(アメリカ型)、3.行政全般に利用(スウェーデン型)をあげた。【もっとも、(2)の分類は不正確だが】
この「中間取りまとめ」から、政府は、(1)については、住基ネットをベースとした新たな共通番号を導入する方向であることが読み取れる。(2)については、2.と3.のミックス型を導入する方向のように見える。
いずれにせよ、菅政権のイメージする共通番号とは、新たな国民総背番号制を敷くことを意味する。しかも、この番号を、少なくとも、税務(個人の納税者番号)や社会保障業務に使うということは、その番号が“可視的な(目に見える)番号”として官民で利用することを意味する。つまり、民間機関に幅広く筒抜け、垂流しすることにつながる。いったん、現実空間に加えネット空間の双方に流通した共通番号の濫用、違法流通に歯止めをかけるのは至難である。
事実、アメリカの共通番号である社会保障番号(SSN=Social Security Number)は、税務や社会保障その他官民に幅広く使われた結果、他人の番号を盗用した成りすまし犯罪が多発している。しかし、抜本的な対策は見つからず、成りすまし犯罪は事実上野放し常態、取締、対応が極めて難しい状況に陥っている。犯罪被害にあった国民が十分な救済が受けられず、金銭的・精神的に多大な負担を強いられる現状にある。連邦や各州の議会や大統領府、各種法執行・取締機関はさまざまな対応策を探ってはいるが、抜本策を見出せないまま今日にいたっている。
この点について、「中間取りまとめ」では、個人情報の保護が必要とはいうものの、何らの具体策も明らかにしていない。意図的に触れないようにしているようにも見える。わずかに第三者機関の設置などには触れている。しかし、従来型の行政主導の機関を設置したとしても、こうした機関がどのように共通番号関連犯罪や人権の保護に奉仕できるかについても、まったく不透明・期待薄である。これでは、国民のプライバシーを危殆に陥れることは確実で、無責任きわまりない内容である。
このまま「中間取りまとめ」にそって、住基ネットをベースとした共通番号が導入されるとすれば、わが国は、アメリカのように成りすまし犯罪社会化の道をすすむのは確実である。国はもとより、自治体も、住民のプライバシーをはじめとしてさまざまな権利を護ることは難しい。共通番号制度の導入の是非については、ゼロベースで、自治体や国民の意見を幅広く聴取して、慎重に検討すべきである。
一方、政府の「高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(通称「IT戦略本部」)」が、6月22日に「新たな情報通信技術戦略」工程表を公表した。これによると、2013年度までに「国民ID(登録証)カード」制の導入する計画になっている。国民IDカード制度とは、内実は、“現代版電子通行手形”、“国内版パスポート”である。現行の外国人登録証カードを内国人に広げるにも等しいといえる。
まともな国民なら誰しも、国が発行したIDカードを携行し・自分の背番号(共通番号)を提示(告知)しないと市民生活ができない社会”の実現を望んでではいないはずだ。自由な市民社会の仕組みとは相容れないのは明らかだ。
政府は、この国民IDカードに、住基ネットをベースにあらたに創設される“共通番号・国民総背番号”を入れる方向である。これは、国民総データ監視国家、国民情報の国家総動員体制を構築することにもつながり、現政権が唱える“地方主権確立政策などに明らかに抵触する。地方主権確立の構想はどこへ消えてしまったのであろうか? 国民情報の国家総動員体制は、あきらかに地方主権確立構想には似合わない
政府の新IT成長戦略では、医療分野でのIT化推進を打ち出し、新たにつくられる共通番号で国民全員の過去の診療履歴をナショナルデータベース(DB)化し、国民IDカードで、全国どこの病院でも見られる仕組みを構築しようという方針も明らかにしている。IT企業や製薬会社などには美味しい話かも知れない。しかし、プライバシー保護の観点から一言でいえば、この愚かな戦略は、“私たち国民全員の生涯病歴・医療情報(lifelong medical records)を公有化し、国家が番号管理しよう”という稚拙で危険極まりない構想である。いい加減にして欲しい。
国民IDカードについて、菅政権は、「国家が共通番号(マスターキー)を使って全国民の幅広い個人情報を管理すること(個人情報の公有化)は、電子政府時代の流れ」という前提にたって制度構築しようとしている。IC仕様の共通番号付IDカードには電子認証(電子署名)機能が搭載されており、各国民は、カードの提示(告知)をすれば、各種データベースにある自己情報を見ることができるという構図を描いている。「国民IDカードで開かれた政府!」しかし、これは、菅政権がいう「増税は成長!」という怪しげなスローガンと同じ類で、本末転倒である。個人情報は、各個人(情報主体)の財産である。国家の財産ではない。わが国は、個人情報を公有化できる社会体制を敷く国家ではないはずである。頭を冷やしてよく考えて欲しい。
イギリスでは、今年(2010年)5月に新連立政権(保守党・自民党連立;Lib-Con Coalition Government)が誕生した。この新政権は、人権を蝕む国民ID【登録証】カード制導入へ逆走するわが民主政権とは対照的に、「国家が必要以上に国民の個人情報を収集しない政策」を打ち出した。そして、前労働党政権下で導入した国民IDカード(National ID card)制を、“恒常的な人権侵害装置”であるとし、政権奪取後に廃止を決定した。5月27日に、「IDカード制廃止100日プラン」を公表し、現在、英議会下院で廃止法案を審議している。頭を冷やして投票したイギリス国民は賢い!!
イギリスとは対照的なのがわが国。共通番号制度検討会「中間取りまとめ」では、「国民の権利を守るための番号に向けて?」という怪しげなキャッチをくっつけている。“国民を監視するための番号に向けて”が正確なキャッチだろうに。ともかく、菅政権は、共通番号と国民IDカードという2つの監視ツールによって、「政府による全国民の個人情報の一元的管理」を目指している。言い換えると、個人の自由を尊重する政府システムとは相容れない政策を実行しようとしている。菅首相の過去の経歴は“市民運動家”? まったく信用できない人物だ。Big Brother≪独裁者≫そのもの。
こうした国民監視政策をたてている役人は背後で高笑いしているに違いない。菅政権は、いまや役人の言いなり。消費税10%への引上げも、その具体例の一つに過ぎない。・・・・・「国民が主役」とはまったくの口先だけ、内実は、「役人が主役」を黙認する政権だ。すぐ豹変する。
・・・民主党は、過去に4回、住基ネット廃止法案を国会に出しているのが・・・・・!!
私たち国民がこんな政権の継続を許すことは、“消費税増税と監視国家体制”つくりに手を貸すことにつながる。この政権の「負の遺産」つくりを、絶対に認めてはならない。
Big Brother