2025/08/27

日経のミスト氏の記事「患者を救うのは消費税だ 〜病院再生、医療費に課税を」(25年8月25日朝刊)を深読みする

【「患者を救うのは消費税“ゼロ税率”だ」〜ろうに?】

日経記者ミスト氏(匿名)は、記事「患者を救うのは消費税だ〜病院再生、医療費に課税を」(25年8月25日朝刊)を掲載した。

ミスト氏は説く。医療機関の公的保険医療サービスが、消費税の非課税取引になっている。このため、医療機関は仕入税額控除ができない。「損税」が発生する。税の累積排除ができるように、「課税取引」にすべきだ、と。

授業料などが非課税となっている大学なども同じ「損税」問題に遭遇している。ミスト氏は、国際医療福祉大学などでレクをしたこともあり、とりわけ医療に関心が深いのかも知れない。

ミスト氏は説く。消費税導入時に、財政当局は、医師会や患者団体などからの政治的圧力をかわすために、「非課税」で妥協を図ったと。どうだろうか?実際は「非課税」導入は、「ゼロ税率つぶし」が狙いだった。導入前の政府税調などでの議論を読めば「真実」がわかる。

ミスト氏は、課税取引にし、軽減税率の適用も選択肢になると説く。ミスト氏の保険医療サービス課税取引案は、踏み込みが足りない。というよりは、生活者を苦しめる主張そのものだ。課税取引になったら、軽減税率でも患者は8%(現行)の負担が強いられることになる。

オーストラリアでは、保険医療サービスはゼロ税率での課税だ。つまり、消費者である患者は、0%で課税。だから実質無税である。一方、事業者である医療機関が提供する保険医療サービスは課税。だから、仕入にかかった税額を控除できる。古くなった病院の再建も容易だ。

ミスト氏は、保険医療サービスへのゼロ税率課税の仕組みがあることを意図的に知らせないようにしているではないか。知見不足とは思えない。専門家のなかでは半ば常識である「ゼロ税率」には一言もふれない。ふれないように記事をまとめる書きっぷりは、この御仁の生き方を表しているのだろう。見方によっては「悪意あるカラクリ」とも思えるのだが?

ミスト氏の提案が正夢になればどうなるのだろうか。消費財源の浸食を危惧する財政当局を忖度し、連中を大喜びさせることになる。一方、生活者を重税で苦しむ、そんな結果になる。タイトルを「患者を“苦しめる”のは消費税だ」あるいは「患者を救うのは消費税”ゼロ税率”だ」に替えた方がよい。

ミスト氏は、熱烈なマイナンバー歓迎派だ。金融プライバシーなど要らないの論調で財政当局に肩入れする。この御仁、話術には長けているのかも知れない。だが、生活者の視点を操ることが多く、あまり誠実な記者には見えない。監視が必要だ。

  多くの日経新聞の読者はバイアスのない記事を求めている。