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PIJの運営委員でもある菊池純氏は、東京税理士会所属の税理士である。同氏が代表を務める「インボイス制度の廃止を求める税理士の会(インボイスNOの会)」は、先駆的な運動をはじめた。X(エックス)[old Twitter/旧ツィッター]やホームページ(HP)を駆使し、インボイス制度廃止を働きかけはじめたのである。
同氏は、デジタル大嫌いのスタンスであったように記憶している。ところが、いつの間にか大きく変身した。いや本人は自覚する間もなく、デジタル軍団に取り込まれたのかも知れない。
いずれにしろ、インボイスNOの会は、フィクサーとして君臨してきた既存のメディア、伝統メディア(「オールドメディア/ legacy media」)に頼ってはいない。運動を、SNSを使った、いわゆる「推し活」戦略にエスカレートさせたのである。
インボイスNOの会は、次のように、公開質問状や賛同者を募り、先の衆院選では、インボイス廃止に向けた投票行動を促している(https://x.com/taxlawyer2022)。
「インボイス制度の廃止を求める税理士の会は、衆議院選挙に向け公開質問状を 10月8日各政党へ送付しました。10月17日までに回答を求めたところ、6つの 党より回答がありました。到着順にここに公開します。 各政党のインボイスに対する方針がよくわかります。投票行動に生かして行きましょう。」
■「推し活」政治(選挙)とは何か?
そもそも「推し活(おしかつ)」とは、自分のイチオシを決めて、応援する活動をさす。語源は、熱狂的なアイドルファンが自分の好きなアイドルを「推し」と呼んだことが始まりである。英語では「ファンダム/fandom=fan + kingdom」。造語だ。
政治(選挙)の世界でも推し活がエスカレートしている。「推し活」政治(選挙)の今後は不透明であるが。 いまや、いわゆる「推し活(ファンダム/fandom)」が政治(選挙)を動かす時世である。「推し活」政治(選挙)の成功体験としては、24年7月の東京都知事選で、SNSを駆使した無所属新人が2位に食い込んだ。
10月の衆院選で、SNSを使った国民民主の「103万円の壁」、「手取りを増やそう」の政治キャンペーンが話題をさらった。玉木個人商店主の不倫問題で揺れたが、強豪相手に粘り勝ちを狙っている。
それから、「2馬力選挙」と揶揄される兵庫県知事選も「推し活」政治(選挙)とされる。
DX化(デジタル・トランスフォーメーション)に伴い、政党・政治組織は、リアル(現実)空間になくとも、ネット(仮想)空間にも構築できる時代になったのである。SNSの使い方がうまくないと、伝統政党でも、新興の政党や政治組織に大負けする、消滅しかねない。そんな時代に突入したのだ。
SNS民主主義が流行りだ。共産党(https://www.jcp.or.jp/oshikatu/)を含め、各政党や政治家は、いわゆる「推し活」(ファンダム)政治(選挙)に熱をあげている。自民党は、年末に、選挙関連サイトの運営会社代表らを講師役に招き、所属議員向けのオンラインセミナーを開催した。公明党は新たなユーチューブ番組を始める。日本維新の会や共産党もそれぞれ、新たに専門組織を設けた。
政党・政治運動体は、リアル空間のみならず、ネット空間でも、大競争時代に突入したのである。今後、ますます支持政党なしの有権者の票の分捕り合戦が激化していくだろう。
■「インボイスNOの会」は悔しさをバネに!
インボイスNOの会は、24年10月17日時点で、「推し活」投稿には127万ものPV(閲覧)があったという。また、各政党へのアンケート回答は圧倒的にインボイス制度「廃止賛成」だった、と成果を強調した。
少数与党政治の下では、野党でも、国会の政党間での「政策協議」で、政策(議員立法)を実現できる可能性が高まる。これまで「言うだけ番長」に徹してきた少数野党でも、政策実現のチャンスがめぐってくる。
税理士の平均年齢は60歳を超える。「デジタルデバイド(情報技術格差)」が問われる年代である。インボイスNOの会の大部分のPV(閲覧)は、非税理士であったのではないか?ということは、中小・零細事業者のみならず、多くの生活者もインボイス制度廃止に賛成したと思われる。
にもかかわらず、インボイス制度廃止法案は、「国対」(国会対策委員会)で議論されないばかりか、国会の政党間での「政策協議」のそじょうに乗ることもなかった。
インボインボイス制度廃止には「旬」がある。だらだら運動をやっていると、”毒蜘蛛の糸にぐるぐる巻きにされ”、"定着”し、"身動き“とれなくなってしまう。
タコつぼ化してしまった「マイナンバー廃止」運動が教訓だ。「共通番号いらない会」は、役人の懐柔には乗らない、ぶれない、戦略もあった。「言うだけ番長」政党・議員との連携もできた。だが、マイナンバー廃止法案を「国対」にあげることはできなかった。
そこで、運動の戦術を、マイナ健康保険証、つまりマイナIDカードの事実上の義務化への抵抗に舵を切った。しかし、ターゲットは、12桁のリアルID(個人番号/マイナンバー)だけ。カードに格納されている「マイナデジタルID(JPKI/公開鍵式ID)」には触れずじまい。デジタルIDへの知見が乏しすぎる。ガラパゴス化し、抜け殻組織になってしまった。残念である。インボイスNOの会は、同じ轍を踏んではならない。
インボイスNOの会、ロビイング(議員立法の陳情/政党・議員への働きかけ)「戦略」はよかった。だが、「戦術」に今一つ工夫が必要だったのかも知れない。つまり、少数与党政権のもとでの政策実現のための推し活戦術の中身が今一つだったのではないか?
インボイスNOの会の菊池代表が、親しみやすい?インボイスNOおじさん“になるのも一案だ。いわば「インボイスNOのデジタル花さかじいさん」になるわけだ。そして、You-cube (ユーチューブ)や、Meta(メタ/old Facebook(旧フェイスブック)、Instagram(インスタグラム)、TikTok(ティックトック)のような動画配信系のSNSで露出して、「バズる(広める)」。わかりやすい「インボイスNOれんげきょう!!」のキャッチで、ネット辻説法をする。こんな工夫があってよい。
菊池氏は、書いた文章の分かりやすさは今一つで、時間にもルーズの自由人(人は誰しも完全ではない!)。だが、正義感は人一倍強く、ぶれない。粘り強さもある。しかも露出大好きのタイプ。インボイス制度廃止の「推し活」行脚にはうってつけの人材だ。「白旗大嫌い!」「当たって砕けろ!」の意気込みで、零細事業者をはじめとした経済的なひ弱な納税者に味方して、大健闘を期待したい。
ただ、”中途半端”な戦術は運動を泥沼化、蟻地獄化しかねない。商売する人たちはもちろんのこと、サラリーマンや主婦、学生、年金生活者など幅広い庶民が「感動」「耳にに残る」キャッチが必須だ。でないと、ギャラリーは聞いてもすぐ忘れる。そして運動も息切れする。菊池氏を、孤島で「インボイスNO!」の赤旗を掲げる裸のじいさんにしかねない。
それに、ロビイングの際には、働きかける政党・議員を、自分の政治信条でえり好みしないことがコツである。大衆に奉仕するスタンス堅持、「言うだけ番長」の政党・議員を見抜ける目利きになること、が大事である。
どんな政策でも、「推し活」でSNSのそじょうに乗せ大衆動員することができれば、しめたものである。議員立法/プログラム法のロビイング(民間団体からの陳情/政党・議員への働きかけ)を請ければ、政党・議員は、それを完全には無視できまい。
悔しさをバネに、強靭な戦術で、しかし慎重に、一発逆転を狙って欲しい。
■混迷を極める「公正で自由な選挙」
もちろん、SNSなどの「ニューメディア」を使った「推し活」政治やロビイングには功罪(毒と効用)がある。ポピュリズム(大衆迎合主義)、マインドコントロール(熱狂)、自由・公正な選挙、フェイク誘導など、解決されなければならない課題も多い。
シルバー民主主義を壊し、若者主体の民主主主義をつくるには「ニューメディア」の出番?? 「破壊こそ建設なり?」。本当だろうか? 今や多くの高齢者がSNSを使いこなす。今の若者もいずれ高齢者の仲間入りをする。SNSを、高齢者と若者の「分断」のツールに使う作法は、いずれ賞味期限切れになるはずだ。
「民主主義の寛容は、トランプ氏のような権威主義丸出しの不寛容に無力なこと」は明らかである。選挙に負けた腹いせにSNSで議会乱入を煽ったことはゆるされてはならない。また、再選で、すべてがチャラになるのでは、「法の支配」に根差した民主主義は崩壊してしまう。”またトラ“で、アメリカ民主主義の修復には、少なくとも4年、必要になった。
兵庫県知事選では、当選を目指さない候補が他人のプライバシーを深く傷つける情報を流布し、他の候補を支援した。いわゆる「2馬力選挙」である。SNSでフェイク情報をネットに垂れ流すのを即座にストップかけるのは至難である。SNSのプラットフォーマーは「疑わしきは削除せず」のスタンスであるからである。また、司法に救済を求めても、膨大なテマ・ヒマがかかる。「法の支配」を求める側が泣き寝入りせざるを得ない構図にある。
「無原則な寛容を捨てて、公的規制に舵を切るべきである。」との声が強まっている。もちろん、公選法との整合性を点検することは大事である。だが、放送法のような縛りで国家が「ニューメディア」を統制・監視するのには、大きな疑問符がつく。憲法が保障する「言論の自由」にとり、危険だからである。わが国が、中国のようなデータ監視国家・デジタル権威国家に変貌しかねないからである。
■「オールドメディア」の新たな役割
東京都議選、参院選をはじめとしたこれからの選挙での動きが注目される。既存の政党と新興政党との間で、「ニューメディア」を使った「推し活」選挙で、集票合戦を繰り広げるのではないか。
「ニューメディア」は、大衆を誘導するために、プライバシーを傷つけ、フェイク情報を垂れ流しているケースも少なくない。ネットで大衆動員して「オールドメディア」たたき、真実潰しにも使われている。
「オールドメディア」は、概して「調査報道(investigative journalism)」に強い。放送法で縛られていることをプラスイメージに使いこなす高度のスキルがいる。勇気を出して、「ニューメディア」が真実を報道しているかどうかを精査・追求しないといけない。萎縮しないことが大事だ。
ネット空間は、無償/タダの「ニューメディア」の独断場だ。有償/強制加入のNHKのネット進出の舵取りは至難だ。民放を超える若者向けの娯楽番組や庶民目線のワイドショーの拡大路線、過去帳番組のネット配信路線もわからないでもない。しかし、こうしたビジネスモデルが、逆に無償/タダの民放との矛盾を広げるのではないか。
今は軌道を失してしまったが、「NHKから国民を守る党」の当初のスタンスは理解できる。カルトから解脱(げだつ)できなかった政党・政治団体の「推し活」選挙モデルの検証にとっても大事である。学びには必須事例だ。
「オールドメディア」に1つである「新聞」もその存在感が問われている。全面広告のような資源の無駄遣いは、止めないといけない。大半の読者は、SDGs報道をしながら「ゴミ」を増産する姿勢に嫌悪している。環境への負荷が大きすぎるからだ。
総花的な報道姿勢の改善も要る。膨れた社員の雇用対策も大事ではある。しかし、経済紙は経済に特化すべきだ。価格を下げ、ネット攻勢、市場競争に挑むべきだ。でないと、「ニューメディア」に負ける。無償と有償では、そもそも勝負にならないからだ。「コンテンツ」で勝負できれば別だが。
対岸のアメリカでは、New York Timesが唯一、新聞のデジタル化の成功例とされる。だが、わが国の新聞が「ニューメディア」に大胆に変身できるかはどうかは行先不透明である。
「Japan as No.1」とちやほやされた時代は遠い昔のことになりつつある。
よいお年を!!
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PIJの運営委員でもある菊池純氏は、東京税理士会所属の税理士である。同氏が代表を務める「インボイス制度の廃止を求める税理士の会(インボイスNOの会)」は、先駆的な運動をはじめた。X(エックス)[old Twitter/旧ツィッター]やホームページ(HP)を駆使し、インボイス制度廃止を働きかけはじめたのである。
同氏は、デジタル大嫌いのスタンスであったように記憶している。ところが、いつの間にか大きく変身した。いや本人は自覚する間もなく、デジタル軍団に取り込まれたのかも知れない。
いずれにしろ、インボイスNOの会は、フィクサーとして君臨してきた既存のメディア、伝統メディア(「オールドメディア/ legacy media」)に頼ってはいない。運動を、SNSを使った、いわゆる「推し活」戦略にエスカレートさせたのである。
インボイスNOの会は、次のように、公開質問状や賛同者を募り、先の衆院選では、インボイス廃止に向けた投票行動を促している(https://x.com/taxlawyer2022)。
「インボイス制度の廃止を求める税理士の会は、衆議院選挙に向け公開質問状を 10月8日各政党へ送付しました。10月17日までに回答を求めたところ、6つの 党より回答がありました。到着順にここに公開します。 各政党のインボイスに対する方針がよくわかります。投票行動に生かして行きましょう。」
■「推し活」政治(選挙)とは何か?
そもそも「推し活(おしかつ)」とは、自分のイチオシを決めて、応援する活動をさす。語源は、熱狂的なアイドルファンが自分の好きなアイドルを「推し」と呼んだことが始まりである。英語では「ファンダム/fandom=fan + kingdom」。造語だ。
政治(選挙)の世界でも推し活がエスカレートしている。「推し活」政治(選挙)の今後は不透明であるが。 いまや、いわゆる「推し活(ファンダム/fandom)」が政治(選挙)を動かす時世である。「推し活」政治(選挙)の成功体験としては、24年7月の東京都知事選で、SNSを駆使した無所属新人が2位に食い込んだ。
10月の衆院選で、SNSを使った国民民主の「103万円の壁」、「手取りを増やそう」の政治キャンペーンが話題をさらった。玉木個人商店主の不倫問題で揺れたが、強豪相手に粘り勝ちを狙っている。
それから、「2馬力選挙」と揶揄される兵庫県知事選も「推し活」政治(選挙)とされる。
DX化(デジタル・トランスフォーメーション)に伴い、政党・政治組織は、リアル(現実)空間になくとも、ネット(仮想)空間にも構築できる時代になったのである。SNSの使い方がうまくないと、伝統政党でも、新興の政党や政治組織に大負けする、消滅しかねない。そんな時代に突入したのだ。
SNS民主主義が流行りだ。共産党(https://www.jcp.or.jp/oshikatu/)を含め、各政党や政治家は、いわゆる「推し活」(ファンダム)政治(選挙)に熱をあげている。自民党は、年末に、選挙関連サイトの運営会社代表らを講師役に招き、所属議員向けのオンラインセミナーを開催した。公明党は新たなユーチューブ番組を始める。日本維新の会や共産党もそれぞれ、新たに専門組織を設けた。
政党・政治運動体は、リアル空間のみならず、ネット空間でも、大競争時代に突入したのである。今後、ますます支持政党なしの有権者の票の分捕り合戦が激化していくだろう。
■「インボイスNOの会」は悔しさをバネに!
インボイスNOの会は、24年10月17日時点で、「推し活」投稿には127万ものPV(閲覧)があったという。また、各政党へのアンケート回答は圧倒的にインボイス制度「廃止賛成」だった、と成果を強調した。
少数与党政治の下では、野党でも、国会の政党間での「政策協議」で、政策(議員立法)を実現できる可能性が高まる。これまで「言うだけ番長」に徹してきた少数野党でも、政策実現のチャンスがめぐってくる。
税理士の平均年齢は60歳を超える。「デジタルデバイド(情報技術格差)」が問われる年代である。インボイスNOの会の大部分のPV(閲覧)は、非税理士であったのではないか?ということは、中小・零細事業者のみならず、多くの生活者もインボイス制度廃止に賛成したと思われる。
にもかかわらず、インボイス制度廃止法案は、「国対」(国会対策委員会)で議論されないばかりか、国会の政党間での「政策協議」のそじょうに乗ることもなかった。
インボインボイス制度廃止には「旬」がある。だらだら運動をやっていると、”毒蜘蛛の糸にぐるぐる巻きにされ”、"定着”し、"身動き“とれなくなってしまう。
タコつぼ化してしまった「マイナンバー廃止」運動が教訓だ。「共通番号いらない会」は、役人の懐柔には乗らない、ぶれない、戦略もあった。「言うだけ番長」政党・議員との連携もできた。だが、マイナンバー廃止法案を「国対」にあげることはできなかった。
そこで、運動の戦術を、マイナ健康保険証、つまりマイナIDカードの事実上の義務化への抵抗に舵を切った。しかし、ターゲットは、12桁のリアルID(個人番号/マイナンバー)だけ。カードに格納されている「マイナデジタルID(JPKI/公開鍵式ID)」には触れずじまい。デジタルIDへの知見が乏しすぎる。ガラパゴス化し、抜け殻組織になってしまった。残念である。インボイスNOの会は、同じ轍を踏んではならない。
インボイスNOの会、ロビイング(議員立法の陳情/政党・議員への働きかけ)「戦略」はよかった。だが、「戦術」に今一つ工夫が必要だったのかも知れない。つまり、少数与党政権のもとでの政策実現のための推し活戦術の中身が今一つだったのではないか?
インボイスNOの会の菊池代表が、親しみやすい?インボイスNOおじさん“になるのも一案だ。いわば「インボイスNOのデジタル花さかじいさん」になるわけだ。そして、You-cube (ユーチューブ)や、Meta(メタ/old Facebook(旧フェイスブック)、Instagram(インスタグラム)、TikTok(ティックトック)のような動画配信系のSNSで露出して、「バズる(広める)」。わかりやすい「インボイスNOれんげきょう!!」のキャッチで、ネット辻説法をする。こんな工夫があってよい。
菊池氏は、書いた文章の分かりやすさは今一つで、時間にもルーズの自由人(人は誰しも完全ではない!)。だが、正義感は人一倍強く、ぶれない。粘り強さもある。しかも露出大好きのタイプ。インボイス制度廃止の「推し活」行脚にはうってつけの人材だ。「白旗大嫌い!」「当たって砕けろ!」の意気込みで、零細事業者をはじめとした経済的なひ弱な納税者に味方して、大健闘を期待したい。
ただ、”中途半端”な戦術は運動を泥沼化、蟻地獄化しかねない。商売する人たちはもちろんのこと、サラリーマンや主婦、学生、年金生活者など幅広い庶民が「感動」「耳にに残る」キャッチが必須だ。でないと、ギャラリーは聞いてもすぐ忘れる。そして運動も息切れする。菊池氏を、孤島で「インボイスNO!」の赤旗を掲げる裸のじいさんにしかねない。
それに、ロビイングの際には、働きかける政党・議員を、自分の政治信条でえり好みしないことがコツである。大衆に奉仕するスタンス堅持、「言うだけ番長」の政党・議員を見抜ける目利きになること、が大事である。
どんな政策でも、「推し活」でSNSのそじょうに乗せ大衆動員することができれば、しめたものである。議員立法/プログラム法のロビイング(民間団体からの陳情/政党・議員への働きかけ)を請ければ、政党・議員は、それを完全には無視できまい。
悔しさをバネに、強靭な戦術で、しかし慎重に、一発逆転を狙って欲しい。
■混迷を極める「公正で自由な選挙」
もちろん、SNSなどの「ニューメディア」を使った「推し活」政治やロビイングには功罪(毒と効用)がある。ポピュリズム(大衆迎合主義)、マインドコントロール(熱狂)、自由・公正な選挙、フェイク誘導など、解決されなければならない課題も多い。
シルバー民主主義を壊し、若者主体の民主主主義をつくるには「ニューメディア」の出番?? 「破壊こそ建設なり?」。本当だろうか? 今や多くの高齢者がSNSを使いこなす。今の若者もいずれ高齢者の仲間入りをする。SNSを、高齢者と若者の「分断」のツールに使う作法は、いずれ賞味期限切れになるはずだ。
「民主主義の寛容は、トランプ氏のような権威主義丸出しの不寛容に無力なこと」は明らかである。選挙に負けた腹いせにSNSで議会乱入を煽ったことはゆるされてはならない。また、再選で、すべてがチャラになるのでは、「法の支配」に根差した民主主義は崩壊してしまう。”またトラ“で、アメリカ民主主義の修復には、少なくとも4年、必要になった。
兵庫県知事選では、当選を目指さない候補が他人のプライバシーを深く傷つける情報を流布し、他の候補を支援した。いわゆる「2馬力選挙」である。SNSでフェイク情報をネットに垂れ流すのを即座にストップかけるのは至難である。SNSのプラットフォーマーは「疑わしきは削除せず」のスタンスであるからである。また、司法に救済を求めても、膨大なテマ・ヒマがかかる。「法の支配」を求める側が泣き寝入りせざるを得ない構図にある。
「無原則な寛容を捨てて、公的規制に舵を切るべきである。」との声が強まっている。もちろん、公選法との整合性を点検することは大事である。だが、放送法のような縛りで国家が「ニューメディア」を統制・監視するのには、大きな疑問符がつく。憲法が保障する「言論の自由」にとり、危険だからである。わが国が、中国のようなデータ監視国家・デジタル権威国家に変貌しかねないからである。
■「オールドメディア」の新たな役割
東京都議選、参院選をはじめとしたこれからの選挙での動きが注目される。既存の政党と新興政党との間で、「ニューメディア」を使った「推し活」選挙で、集票合戦を繰り広げるのではないか。
「ニューメディア」は、大衆を誘導するために、プライバシーを傷つけ、フェイク情報を垂れ流しているケースも少なくない。ネットで大衆動員して「オールドメディア」たたき、真実潰しにも使われている。
「オールドメディア」は、概して「調査報道(investigative journalism)」に強い。放送法で縛られていることをプラスイメージに使いこなす高度のスキルがいる。勇気を出して、「ニューメディア」が真実を報道しているかどうかを精査・追求しないといけない。萎縮しないことが大事だ。
ネット空間は、無償/タダの「ニューメディア」の独断場だ。有償/強制加入のNHKのネット進出の舵取りは至難だ。民放を超える若者向けの娯楽番組や庶民目線のワイドショーの拡大路線、過去帳番組のネット配信路線もわからないでもない。しかし、こうしたビジネスモデルが、逆に無償/タダの民放との矛盾を広げるのではないか。
今は軌道を失してしまったが、「NHKから国民を守る党」の当初のスタンスは理解できる。カルトから解脱(げだつ)できなかった政党・政治団体の「推し活」選挙モデルの検証にとっても大事である。学びには必須事例だ。
「オールドメディア」に1つである「新聞」もその存在感が問われている。全面広告のような資源の無駄遣いは、止めないといけない。大半の読者は、SDGs報道をしながら「ゴミ」を増産する姿勢に嫌悪している。環境への負荷が大きすぎるからだ。
総花的な報道姿勢の改善も要る。膨れた社員の雇用対策も大事ではある。しかし、経済紙は経済に特化すべきだ。価格を下げ、ネット攻勢、市場競争に挑むべきだ。でないと、「ニューメディア」に負ける。無償と有償では、そもそも勝負にならないからだ。「コンテンツ」で勝負できれば別だが。
対岸のアメリカでは、New York Timesが唯一、新聞のデジタル化の成功例とされる。だが、わが国の新聞が「ニューメディア」に大胆に変身できるかはどうかは行先不透明である。
「Japan as No.1」とちやほやされた時代は遠い昔のことになりつつある。
よいお年を!!