2013/02/26

パスワードを頻繁に変えるICT全盛時代に生涯不変の「見える共通番号(国民背番号)」を導入する愚策

ICT(情報通信技術)全盛の今日、パスワードを頻繁に変えることで安全を確保するのが常識だ。こうした時代に生涯不変の見える共通番号/マイナンバー(私の背番号)の導入、国民に汎用させるのは今世紀最大の愚策である。明らかに時代遅れでもある。

電子政府構想のもと、行政事務やそれに関連する民間の事務は、現実空間(real space)のみならず電脳空間(cyber space)にも広がっている。雇用その他各種サービス給付を受ける際に共通番号を所轄機関や企業などに提示したとする。コンピュータに蓄積された「共通番号付き個人情報(特定個人情報)」は、ハッカー攻撃で常に盗み出される危険にさらされる

今日、企業や機関、個人から情報を盗み出すハッカー技術と、それを探知・防止する技術はイタチごっこが続いている。ハッカー対策から、電子取引では、頻繁にパスワードの変更が求められる。生涯不変のマスターキーのような共通番号は一度盗み出されれば、成りすまし犯罪には極めて脆弱である。共通番号を使うことを強いる政府の構想は、原発以上に「負の遺産」となるはずだ。

パスワードを頻繁に変える時代の要請を直視しようとしない政治姿勢は、大きな不幸をうむことにつながる。安全神話が説かれていた原発は、いまや国民のマインドコントロールが解け、想定外ではすまされない実情にある。ましてや共通番号にいたっては、導入する前からその欠陥が明らかなのである。本来リコールすべき構想であるのに、これをすすめるのは愚策としかいいようがない。

アメリカでは、見える共通番号(SSN=社会保障番号)を悪用した成りすまし犯罪で手がつけられなくなっている。昨年、ついに国防総省(DOD)は、国家安全保障対策から、共通番号(SSN)から離脱し、軍務にDOD分野に独自の番号(DOD番号)への一斉変更・転換利用に踏み切った。

高度情報社会に今日、ICT(情報通信技術)を成長戦略に据えることに異論は少ないはずだ。だが、生涯不変の見える共通番号の導入はいただけない。犯罪ツールをつくるのに等しい。罰則を厳しくしても、成りすまし雇用など共通番号を使った犯罪を防ぎことは無理である。また、取扱を間違えばいつ犯罪者にされるかわからないような怖い番号など、企業の社会保障や源泉税実務の現場にはなじまない。

こんなムダな公共工事をしなくとも、今ある目に見える分野別の番号を効率化・整備して紐付けできる仕組みを構築することで十分である。安心、安全は、厳罰ではなく、システムの工夫で確保すべきである。IT利権、ムダな公共事業の典型である共通番号は絶対に要らない。

再度問う。フェース・ツウ・フェースの取引が減少しているICT(情報通信技術)全盛の今日、見える共通番号を幅広く使う仕組みは明らかに時代遅れだ。電子取引では、頻繁にパスワードの変更が求められる。同じ共通番号を一生涯にわたって使うことを強いる政府の構想は、「最初から不能不全を起こしている」と断じるほかない。共通番号4法案は要らない。政治家も国民も頭を冷やそう。

PIJ共通番号導入反対プロジェクト