2024/11/08

トランプショックとアメリカ税務行政の行方

米大統領選は、選挙モンスター、トランプの大勝利だった。この結果には、アメリカのみならず、世界の民主勢力には大きなショックを受けた。リベラルなニューヨーカーのなかには、アメリカ政治に失望し、カナダなど他国へ移住したいという人まで現れている。

大統領選挙の投票日が近づくにつれて、NYタイムズを除き、主要新聞が次々と「沈黙」し出した。今回のハリスの大負け、メディアには、想定の範囲内だったのかも知れない。

衰えを隠せない現大統領の姿は、強いアメリカを求める民衆には、マイナスのインパクトが強すぎた。一方のトランプは、同じくらいの年齢でも、マッチョで、発言も、失言も、力強い。

連邦議会民主党が、衰えの隠せない現大領領に、「バイバイ、バイデン」ができなかったことが一番の敗因ではないか。バイデンが早めに次期大統領職のシートを手放し、ちゃんと予備選をやっていれば、結果は異なっていたのかも知れない。

バイデンのパートナーのハリスは、元検察官で「法の支配」に終始。経済の話になると、無難な答えをするので精一杯。日本では、裏金問題追及だけで票が集まる。だが、アメリカは違う。大領領選では、経済や税財政政策で説得力をもって語れないと、大きな弱点になる。バイデン政権は、イスラエルやウクライナに大量の武器を送った。ところが、制限付きとかで中途半端。死者なしで戦争を終わらせる政策がない。そのかげで「インフレで中産階級の生活は火の車」。民意が、彼女に「ノー」をつきつけた最大の理由の1つであろう。

民意は、トランプがベストとはいえないが、バイデン政策の承継ではなく「チェンジ」を求めたのであろう。民意は、当面「人権より、生活、パン」ファーストを求めたのは確かだ。しかし、いずれ生活者がこの投票行動のつけをは払わされことになるになるかもしれない。自己中のトランプと自己中の投票をした生活者、どちらに勝ち目があるのだろうか。2年後の連邦議会議員の中間選挙の結果を待つしかない。

「有色人種、しかも女性、大統領職、軍の最高司令官職は、任せるわけにはいかない!」の隠された民意が票に現れたのこともあろう。男尊女卑、白人至上主義、キリスト教の良妻賢母のような込み入った流れが圧倒してしまったのかも知れない。とりわけ、中西部の白人、全国の黒人男性には、「黒人の女性が大統領になる」のには、抵抗感が強いようだ。こうした傾向は、世論調査などを見ればわかる。白人のヒラリー・クリントンでもガラスの天井を打ち破ることができなかった。アメリカの有権者は、女性、しかも有色人種、の大統領を受け入れる心構えができていないということだろう。いいかえると、トランプは、2回とも、女性候補に助けられたということだ。男性のバイデンには勝てなかったわけだから。

ということは、本当のところ、男社会の実態は、アメリカも、日本とあまり変わらないのかも知れない。

カマラは頑張った。だが、アメリカの隠された男社会の岩盤を突き崩せなかった。次回の大統領選でも、カマラの再登板は至難であろう。

白人至上主義、有色人種排除の動きが強まり、さらに分断が進むのは必須だ。トランプ政権では、白人優先の閣僚人事が進むのではないか。

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さっそくカリフォルニア州(加州)のギャビン・ニューサム知事が、トランプの政策に反旗!!をあげた。「加州と民主主義を守るために闘う!」がキャッチだ。

トランプは、地球温暖化対策を掲げるパリ協定を脱退し環境保護には後ろ向きの姿勢を貫いている。彼は、選挙戦で、環境保護ファーストのリベラルが支配する加州には、山火事が起きても連邦予算を付けないと揺さぶった。

しかも、ハリスもバイデンも早々と敗北宣言をした。結果、法の支配を散々無視してきた暴れん坊のトランプを無罪放免にした。赦すことは大事である。2人とも、潔しで、お行儀もよい。だが、「ワイルドウエスト」の伝統のある加州のトップとしては、赦す、赦されることで一件落着を急いだ2人に相当ショックを受けたのではないか。いま、ニューサムは「怒りのランボー」常態だろう。

白人そして男性のニューサムが、4年後の民主党の大統領候補の一番手になるのではないか。ニューサムは、最近、加州議会がAI規制法を成立しようとしたのに拒否権を行使した。左派・リベラルのカラーを薄めようと懸命だ。産業界寄りの姿勢も見せて、支持層の拡大に努めている。

ニューサムは、トランプの後釜としては、最適な人材に1人だと思う。ただ、トランプのような選挙モンスターではない。ニューサムは「加州と民主主義を守るために闘う!」ことで、タフガイで、全米に注目され、民意をつかめる選挙モンスターに成長して欲しい。世界の大国アメリカのリーダーとして安心して投票できる大統領候補になって欲しい。

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トランプの再登板で、アメリカ(連邦)の税制や税務行政はどうなるのか。

不動産業界出で減税大好きのトランプ租税政策の大黒柱は、現行の法人税率21%から15%への引下げだ。イーロン・マスクマスク氏が率いるテスラのような大企業は潤うことになる。(余談だが、トランプとマスクは、どちらも唯我独尊、いずれは仲たがいかも知れない。)

トランプは「減税」ファーストの一方で、アメリカの産業/労働者を保護するために「関税」大幅引上げを叫ぶ。ただ、アメリカの生活者は、安価な外国産品で潤ってきた。関税の大幅引上げは輸入品価格が大幅上昇につながる。関税引上げで、確かに国庫には大きな税収が転がりこむ勘定になる。だが、生活者には、実質3〜5%の連邦消費税を導入するに匹敵する増税になるとの試算もある。生活者には大きなマイナス効果が及ぶ。生活者はインフレに苦しむ結果になるはずだ。

バイデンの税務行政政策の基本は、税務調査強化で税収をあげる、というものだ。トランプの返り咲きで、これまでのバイデンの税務調査強化策はストップするはずだ。

アメリカは、スポイルシステム(猟官制)を敷く。選挙だ勝った政党が、政府官職のポストを総取り(政治任用)する仕組みだ。連邦課税庁(IRS/内国歳入庁)のトップは政治任用なので、変わる。IRSの予算は大幅に削減されるだろう。IRSの組織も大きく変わり、ダウンサイズ化が進むだろう。

それに、納税者(とりわけ富裕層)の権利利益は今以上に保護されるはずだ。わが国では、概してリベラルが減税・納税者の権利保護を叫ぶ。ところが、アメリカでは真逆だ。保守が減税・納税者の権利保護を叫ぶ。

いずれにしろ、IRSの無人化、税務のデジタル化で、徴税コストの大胆な削減、IRSの「解体的」な合理化に進むのではないか。

IRSは、2024年15日にはじまる2023課税年分の個人所得税の確定申告から、記入済み申告(pre-filled tax return system)を、ダイレクトファイル(DF)の名称で本格導入する。バイデン政権は、記入済み申告導入で納税者を煩雑な確定申告から救い出せる、という考えだからだ。給与所得や年金所得など、簡潔な確定申告をする納税者は、IRS のウエブサイトにログインし、スマホの画面を見ながらIRSが作成した申告データに同意すれば、ワンクリックで確定申告を終えられるようになる。

これまでの電子申告システム(e-file)では、市販の税務申告ソフトを使う。ところが、新たに導入されたダイレクトファイル(DF)は違う。納税者は確定申告に市販の申告ソフトを使う必要がない。無償、官製/官営のシステムだからだ。民間の税務申告ソフト業界からすると、まさしく、官尊民卑のシステムに映る。

民間ファーストを唱える議会共和党は、民間の税務申告ソフト業界益の擁護に熱心だ。連邦議会共和党が、大統領職に加え、議会上下両院の過半数を制し、“トリプルレッド”になる可能性が極めて濃厚だ。次期トランプ政権下、議会共和党は、無償のダイレクトファイル(DF)のエスカレート利用にストップをかけ、税務申告ソフト業界益を保護に動くのではないか?

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上品ではないトランプの返り咲きは、品位を大事にするアメリカ人には大きなサプライズだ。それに、いまだ人種、ジェンダーの壁はとてつもなく分厚いと感じる。「勝てば官軍、負ければ賊軍」の言葉は、今後アメリカでも広く通用しそうだ。

不動産業界出、唯我独尊のトランプ再登板で「破壊こそ建設なり」の大きなウエーブが起きるのではないか?西欧型民主主義のフロントランナーのアメリカが、権威主義国家、独裁者主導国家に変容することが危惧される。

グローバルに見ても、今後数年は、政治倫理、国際協調よりも、弱肉強食、マネーファーストで経済的強者が威張りちらす、資本主義丸出しの時代が続くのではないか。

2024/09/14

各地であぶり出される恐ろしき公権力濫用県政

◆兵庫県の公益通報制度は“盗聴器”?

ドイツのナチス政権下、その後の東ドイツでは、市民が赦しを乞うに訪れた教会懺悔室は盗聴器だらけだった。こんなこと、独裁国家、権威主義国家では常識としても、民主主義国家では赦されない。

公益通報者保護法は、報道機関なども通報窓口として定め、一定の要件のもとで通報者への不利益な取り扱いを禁じている。斎藤元彦・兵庫県知事は、自身のパワハラ行為などの告発者捜しに公益通報制度を悪用していたことがわかった。 兵庫県のように公益通報制度を“盗聴器”のように扱う実務は、民主主義国家にはなじまない。県の百条委員会で参考人として意見を述べた山口利昭弁護士は批判した。「文書の存在を知った直後に、誰がどんな目的で書いたのか探索するというのはありえない。法令違反だ」と。

斎藤氏のような資質の人物は、やはり民主主義を大事にしないといけない組織のトップにはふさわしくない。権力を持つとおごり高ぶり、市民や弱者をいたぶるような感覚の人物は、政策を練る仕事をする前に、自らの再教育が必要だ。任意取得のはずのマイナ保険証を国民をいたぶるように強いる御仁や、介護施設や保育園などで弱い入所者や入園者をいたぶる人物も同様である。

◆岐阜県警の市民情報の違法収集・横流しは違憲・違法

岐阜県警大垣署が、岐阜県大垣市での風力発電施設建設に反対する地元の寺の住職ら市民の学齢や病歴、過去の市民運動暦などの個人情報を中部電力子会社「シーテック」に垂れ流ししていた。

この事実をオープンにしたのは、朝日新聞名古屋本社版2014年7月24日のスクープ記事である。この記事では、県警大垣署警備課とシーテックが、複数回にわたり協議した内容の議事録が詳報された。

2016年12月、名指しされた市民4人が原告となり、岐阜地裁に提訴した。警察が目を付けた特定個人の情報を集め、第三者に提供するのはプライバシーや思想・信条の自由、表現の自由を侵害するというのが提訴の理由だ。

岐阜地裁は、2022年2月に、判決をくだした。警察の行為は、プライバシー情報を積極的かつ意図的に提供したのは悪質であるとした。220万円の賠償を命じた。一方、情報収集の違法性は認めなかった。理由は、警察は、万一に備えて情報収集の必要性があったからだという。原告市民は、名古屋高裁に控訴した。

名古屋高裁は、2024年9月13日に判決をくだした。情報収集の違憲性、違法性を指摘して一審岐阜地裁判決を変更し、一部の抹消を命じた。賠償額についても情報収集が警察官の裁量権を逸脱しており、プライバシー侵害は明らかだとして原告請求を認容した。賠償額も、一審から倍増の計440万円とした。

今年8月、名古屋高裁は、無罪判決が確定した男性が捜査時に採取された指紋やDNA型を警察庁のデータベースから抹消するよう求めた訴訟で、データの抹消を命じた1審判決を支持する判決を言い渡した。この判決も今回の判決を書いたのも、名古屋高裁の長谷川恭弘裁判長である。今回の判決を下した9月13日が同裁判長の退職日。警察当局による行き過ぎた情報収集活動を立て続けにとがめた形で裁判官の仕事を終えることになった。

公安警察の行き過ぎた情報収集・配付を厳しく批判した名古屋高裁判決を、原告の市民側は「望みうる中で最高の判決」と高く評価した。

岐阜県警を実質的にマネージしている警察庁(国)は、名古屋高裁の判決には納得しまい。今後、最高裁で争われるのではないか。

鹿児島県警の事例もいまだ記憶に新しい。各地であぶり出される恐ろしき公権力濫用県政をとがめるには、やはり市民のパワーが要る。

 2024年9月13日 名古屋高裁判決の要旨

 <県警の行為は違憲・違法>

 憲法は、個人情報の収集および保有がみだりにされない自由も保障していると解すべきである。これらが侵害された場合に、損害賠償請求ができるのはもちろんのこと、保有している情報の抹消なども具体的な権利として認められる。  県警による個人情報の取得、保有および利用は、著しく社会的相当性を欠き、恣意的な運用が行われていた。県はこれを改めようとはせず、一般的、抽象的な公共の安全と秩序維持を唱えて擁護しようとするばかりである。警察組織内部での自浄作用は全く機能していない。  県は大規模かつ無秩序な「大衆運動」が展開する危険性を秘めているなどと主張する。加えて、県警が行った情報収集活動にも必要性は認められるなどと主張する。しかし、市民運動やその萌芽の段階にあるものを際限なく危険視して情報収集し、監視を続けることが憲法による集会、結社、表現の自由の保障に反することは明らかで失当というほかない。  原告らが行ってきたこれまでの活動を見ても、何ら犯罪性や、公共の安全や秩序に対する危険性は認められない。原告らは適法かつ平穏な方法によって活動していると認められる。風力発電事業に対する反対運動が広がったとしても、公共の安全や秩序の維持が損なわれる可能性は全くうかがわれない。  県の主張は市民運動一般に対する誤った理解に基づく独自の見解と言わざるを得ない。原告らのメーリングリストの内容を県警や中部電力子会社シーテックが入手することは、メーリングリストがそこに含まれる限られた者の通信手段であり、外部に公開されていないことからすると、憲法の保障する通信の秘密を害する行為であると認められる。情報を入手する手段において違憲、違法と言わざるを得ない。  原告らはいずれも県警から違法に個人情報を収集、保有された上、シーテックに違法かつ意図的に個人情報を提供されたことで多大な精神的苦痛を被った。原告に支払われるべき慰謝料額は請求額である100万円を下らず、弁護士費用についても10万円を下らない。

 <結論>  県警の収集、提供行為の違法性について1審判決を一部変更し、原告らの損害賠償請求をいずれも請求通り認容し、県の控訴を棄却する。提供情報に基づいて事業者が作成した議事録の記載から特定できる情報の抹消について、県に対する請求を認容し、国に対する請求を棄却する。

2024/04/04

税務相談ロボットの興隆と税理士業務の展望   

2024年4月3日の東海税務法務研究会(東海税法研)では、AI(人工知能)を使った税務相談ロボット(https://www.robon.co.jp/:例えば参考記事として:https://officenomikata.jp/news/15944/)が話題となりました。

「税務相談ロボットと税理士業務」の問題は、多くの税理士の市場からの退場につながりまねません。深刻にとらえる必要があります。4月2日のNHKニュースでは、インボイス制度とデジタル化で税理士の休業・廃業が相次いでいることが報道されました(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240402/k10014410011000.html)。税理士業務のデジタル化/IT化に続き、税理士業務のAI(人工知能)化も身近に迫ってきています。こんなに税理士界に危機が迫るなか、日税連の幹部10人程度、うち3人は夫婦で、2,000万円もの予算を組んでドイツの税理士会とリアル(対面)の交流会をするとか。オンライン/デジタル時代にはまったく似つかわしくない会の浄財の濫費が話題をさらっています。

そこで、今回は、税理士の危機管理意識を高める狙いで、税理士業務のAI化問題についてQ&A形式で、少し点検してみたいと思います。論点は、税務相談ロボットと税務会計IT企業の行方、税理士業務(判断業務)の行方、税務相談ロボットと税理士法など多岐にわたります。ただ、今回は、いくつかに論点を絞って見てみます。

(Q)税理士法に定める「税理士業務」は、「税務代理」、「税務書類の作成」、「税務相談」の3分野です。一方「税理士の業務」は、前記3分野に加え、記帳代行などの業務が加わります。税務のデジタル化/IT化/AI化が急激です。まず、税務会計ソフトウエアIT企業がどう事業展開したらよいのでしょうか?

(A)これまで、多くの税務会計ソフトウエアIT企業(税務会計IT企業)は、「税務書類の作成」のIT化で事業展開してきました。しかし、チャットGPTのような生成AI(人工知能)の出現により、「税務相談」のAI化に対応できるかどうかが、これら税務会計IT企業の存続を左右する時代に入っています。税務相談のAI化とは、税務相談ロボットの事業を展開することを意味します。この種の事業を展開するには、莫大な投資が必要になります。

ビッグ4(世界4大税務・会計・監査企業)は、税務相談のAI化に莫大な投資をしています。わが国の税務会計IT企業の多くは、太刀打ちできないのではないか、と思います。税務会計IT企業には、経営権を放しても、資本を注入し、税務相談AI化の荒波に立ち向かう気概が求められています。

(Q)最近、さきがけのベンチャー企業(リボン社)が開発した「税務相談ロボット(https://www.robon.co.jp/)」が話題をさらっています。この税務相談AIロボットは、的確なアンサーを提供してくれるのでしょうか?

(A)すでに試された税理士もたくさんいると思います。この企業は、日経新聞にも全面広告をアップしてましたので。皆さんの感想は、「まだまだ」、「未熟」、「国税庁のQ&Aのコピーが出てくる」とか、精度は今一つです。評価はあまりよくない感じです。データの蓄積が不十分だとAIは精度があがりません。

ただ、近年のデジタル化/AI化のスピードは、かつての10年が1年のような状況です。数年後にはさまざまな税務相談ロボットが市場に出回り、激烈な競争になるかも知れません。

(Q)税務相談ロボットは著作権上の問題を抱えていると思いますが?

(A)的確なアンサーを提供できないと税務相談ロボットの生存は至難です。しかし、あらゆるデータや情報、学術論文などをインプットして生成AIを使った完成度の高い商用の税務相談ロボットをつくり上げるには、著作権の保護が厳しく問われてくると思います。医療用手術ロボットなどとは、少し違う次元の問題がでてくると思います。

(Q)税務相談ロボットは、税理士法で規制対象となる「税理士等でない者」(非税理士)にあてはまるのでしょうか?

(A)4月1日から税理士等でない者(非税理士)に対する税務相談停止命令制度(税理士法第54条の2 /税理士等でない者が税務相談を行つた場合の命令等)が施行されました。その骨子は、次のとおりです。

 1. 税理士等でない者が、有償か無償かを問わず、2.「税務相談」を行った場合で、3.「更に反復して」行われ、4. 不正に国税や地方税の賦課・徴収を免れさせ、又は不正還付をさせることにより、納税義務の適正な実現に重大な影響を及ぼすことを防止するため、5. 財務大臣が、緊急に措置を取る必要があると認めるときは、6. 国税庁長官が、5のための調査する必要性があると認めるときは、相談を行った者への報告徴収、または国税庁・税務署職員による質問・検査の実施し、7.「財務大臣は停止等必要な措置を命じることができる。

世界各国には、ロボットに人格を認めようという動きがあります。しかし、現時点で、わが国には、ロボットに人格を認め、ロボット税を課すとか、ロボットの行った知的作業に刑事責任を問うとか、不法行為責任を問うとかの議論は熟していません。加えて、税務相談ロボットの使用者責任とか、製造物責任とかの課題も深掘りされていません。

諸外国では「タックスシェルター規制」をしています。つまり、租税回避スキームなどを考案し、販売するビジネスに政府規制をかけています。仮に、税務相談ロボットが、4. 不正に国税や地方税の賦課・徴収を免れさせ、又は不正還付をさせることにより、納税義務の適正な実現に重大な影響を及ぼす事態が生じた場合には、どのような政府規制をかけるのかが問題になるかもしれません。税理士法は、士業を規制する、いわゆる「業法」です。そもそも、税理士法で、タックスシェルター規制をするのは、お門違いです。

(Q)AI活用の高度な税務相談ロボットの出現で、税理士は生き残れるのでしょうか?

(A)現在の税理士界は、IT化/デジタル化に遅れ、「赤信号、みんなで渡れば怖くない」のような雰囲気です。しかし、税理士も、課税庁も、納税者も、AI活用の税務相談ロボットを使うようになれば、税法の適用・解釈の画一化は格段に進むのではないか、と思います。生き残りが至難という意味では、税理士だけでなく、他の仕業も同じではないかと思います。

日税連自体が、独自の税務相談ロボットを開発して会員の便宜を図るという選択も考えられます。しかし、幹部が、オンラインで済むものを、リアル(対面)の社交にして、会員の多額の浄財を浪費している現状では、前途多難です。「自戒自浄」「会員ファースト」のスタンスが求められています。

2024/02/09

問われる消防救急へのマイナ保険証活用プラン 〜新たなマイナ保険証パンデミック拡散プラン

≪震災被災者の避難所を自動改札で監視する愚策≫

総務省消防庁主導の消防救急へのマイナ保険証活用プランが浮上している。消防の救急搬送(119番)では、現在、傷病者(患者)の情報は、救急隊員らが、口頭で聴き取っている。

そこで、救急隊員らが本人の同意を得て、マイナ保険証をICカードリーダーで読み取り、タブレット端末でオンライン健康保険資格確認等システムにアクセスし、システムに格納された医療情報/データ【薬剤情報・診療情報・特定検診情報(ほかに透析・医療機関名)】を閲覧して、搬送先医療機関を選定し、救急搬送する仕組み作ろうということで計画が進んでいる。マイナICカード携行の実質義務化推進が狙い。

消防庁のプランによると、今回の試験運用では、全国722消防本部から47を選び、計500隊で、今(24)年5月ころから順次実施する計画のようだ。

https://www.fdma.go.jp/singi_kento/kento/items/post-118/01/shiryou1.pdf

2024/02/08

石川能登大震災でJR東日本のSuica/スイカ配布の怪! “ショックドクトリン”で、Suicaカードの隠れたマイナカード化?

JR東日本のSuica/スイカ部門にいた御仁がスカウトされ、23年4月にマイナカード発行元のJ-LIS(地方公共団体情報システム機構のトップ(理事長)に就いた。これは、総務省が、公的デジタル個人認証ツールである官製の共通デジタルID/デジタルマイナンバーの民間利用拡大を狙ってのことだろう。

この人事の背景には、「民間のデジタルID/個人認証制度は要らない。わが国のデジタル経済社会は官製の共通デジタルID(JPKI)/デジタルマイナンバーで徹底的に一元監視する!!」といった役人の妄想がうごめく。

早速、この「JR東日本からJ-LISへの天上がり」人事の“負の効果”が露呈した。

今般の石川能登大震災で、石川県は、避難生活を続ける住民に対し、2月7日からJR東日本の交通系ICカード「Suica/スイカ」の配布をはじめたのだ。カードには名前や住所、避難先といった情報がひも付けられ、住民が避難所にあるカードリーダーにタッチすると、いつ誰が来たのかを県や自治体が確認できる仕組み。まさに、通行手形を常時携行しないと、現代版関所を通過できないデータ監視システムだ。

県としては、このシステムの活用で被災者の現状把握をしたいという。今回の取組みは、デジタル庁などとの連携で、県は、各地の避難所でICカードの配布とカードリーダーの設置を進めていくそうだ。

被災地での盗難防止で監視カメラ網を構築、そして今度は、カードリーダーの設置。住民のデータ監視大好きの国と県の役人が、「ショックドクトリン」でタイアップ?災害時だから、面倒なパブコメや聴聞などの手続は要らない、の姿勢。だが、「災害時には人権ゼロもゆるされる??」は誤りだ。被災者の尊厳と平等を守るために、災害対応の際にも人権ファーストでないといけない。被災者が集う避難所に自動改札を設置する発想には恐れ入る。それに避難所は囲いのあるプロレスのリンクではない。

石川県能登の被災地では「マイナカードパンデミック」ならぬ「Suica/スイカカードパンデミック」が起きようとしている。“Suica/スイカカードの隠れたマイナカード化”は脱法行為ではないか?

マイナカードとスイカカードの融合、官民連携で、被災住民のプライバシーの丸ごと監視システムは、まさに人権「反故」システムだ。

被災者向けのこのシステムは、顔パス式マイナ保険証(オンライン健康保険資格確認システム/Mシステム)導入による位置確認・電子データ収容所列島化策の「被災者向けSuica/スイカバージョン」(Sシステム)ともいえる。

そもそもこんな監視(S)システムは、長期停電などが伴う災害時にはうまく機能しないのではないか。被災者をモルモットにしたデジタルビッグブラザー(デジタル監視国家)つくり、血税無駄使いの実証実験は止めにして欲しい。「S」も「M」も要らない。

「ショックドクトリン」、つまり、役人は“ドサクサ時は何でもできる”の姿勢では困る。そんな姿勢では、火事場ドロ、被災地ドロとあまり変わらない。カオス大好きのプロレスでも一応のルールがあるではないか?人間ファーストを精神を忘れてはならない。血税は、仮設住宅の建設など被災者の生活支援に使わないといけない。

いずれにしろ、官製の身分証明書を発行する諸国では、もはやICカードは使っていない。直接スマホに格納する方式になっている。

“敵に塩を送る”わけではないが、マイナICカードの交付はやめにして、スマホに直接格納する方式にしてはどうか?いまや住民は、災害時にも、スマホは持っていれば、必ず身に着けて避難するはずだ。いまだ時代遅れの官製のICカードを発行し続けているから、こうなる。

「政府は住民にマイナICカードを常時携行させるさらなる工夫がいる!」とか??こんな青二才の大学の先生の怪しげなコメントは有害である。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240207/k10014351021000.html

2024/01/31

コンビニでの住民票の紙交付でデジタル化?のフェイク

名古屋市の河村たかし市長は、1月22日、マイナバーICカード(マイナICカード)を使った紙の住民票のコンビニ交付サービスを導入するとアナウンスした。

市民が、コンビニにマイナカードを持参して、紙の住民票の交付を受ける。これが、国が進めるデジタル化の一環? 冗談ではないか? フェイクではないか?

そもそも、「電子政府/電子自治体サービスには、『官製ICカードを使わない』のが世界の流れ!」である。アメリカ、カナダ、オーストラリア、EU諸国などでは、もはや官製ICカードは使っていない。今や「市民は、電子政府/電子自治体サービスは、“スマホ”でやり取りするのが世界の常識だ!」からだ。ICカードは、スマホには不都合だ。クレカ(クレジットカード)もスマホに直接格納/装備する時代だ。

ところが、わが国の電子政府/電子自治体モデルは、「パソコン(PC)+官製ICカード+ICカードリーダー」の3点セット。このモデルは、時代遅れ、ガラパゴス化している。

名古屋市は本気で電子自治体を目指すつもりなら、住民票のコンビニ交付サービスのような血税無駄遣い、国の邪道なデジタル化に加担してはいけない。市民がスマホで市役所のポータルサイト/デジタルプラットフォームに直接アクセスし、市が住民票の提出先に直接電子住民票データを送る仕組みにしないといけない。

名古屋市はこれまで政令市で唯一、住民票のコンビニ交付サービスを導入していなかった。頼もしいと思っていたのだが。総務省の軍門に降ったの感が否めない。

河村市長は、政策変更(転向)の動機として、1月22日から全国の一部コンビニで、マイナンバーカードの機能を搭載したスマートフォン(スマホ)で住民票交付が可能になったことをあげた。河村市長は「カードを持ち歩かなくてもよくなり、巨大な一歩」と持ち上げ、住民票のコンビニ交付サービスの導入を決めたとしている。ただ、早くて2026年度中の導入になるとのことだ。24年2月の市議会に関連予算案を提出するとのことだ。

転向の背景には、市民からはコンビニ交付を可能にすべきだとの苦情が相次いでいたことがあるようだ。こうした苦情は、市議会の自民など総務省喜ばせ組によるグループ活動の結果なのかどうかは定かではない。

いずれにしろ、市民に「電子政府/電子自治体サービスには、『官製ICカードを使わない』のが世界の流れ!」と説明しても、ほとんど理解されない。市民も“横並び自治体大好き”。とりわけ、住民票発行のような分野では、大本営発表(総務省)を信じて疑わない市民が多い。先の侵略戦争が、止まらない、止められないエビ戦(煎餅)のようになってしまったのもフェイクを信じてしまった皇民にも原因があったのだが・・・。

マイナ保険証、事業者登録番号を使った消費税のインボイス制度等々・・・。国の役人がデザインした監視社会化/ビッグブラザー化プランは検挙にいとまがない。政治家も、もはや監視の対象外/治外法権ではありえない。自分らがビッグブラザーの監視対象にされないで使えるカネの確保に必死のありさまだ。政権政党所属の国会議員が、久しく役人社会主義に加担してきた当然の帰結ではないか?

ムシロ旗のマイナ反対市民運動も、政界に独自の橋頭保を確保する力量がないのは明らかで、もはや勝負にならない。

スマホネ―ティブ【スマホで育ってきた世代】が主役になる時代は間近だ。いずれスマホのよる電子住民票交付サービスに移行せざるを得まい。“マイナICカードを使った住民票のコンビニ交付サービス”が時代遅れ/ガラパゴス化するのにはそれほど時間がかかるまい。

市民を食い物にしたIT企業と国の役人が結託した血税浪費のデジタル化プランが止まらない。データ監視で常時人権侵害は当り前の政策では、市民を幸せにできない。

政治は、カナダにならって、「マイナンバー制度が、国民総背番号制度にならないように法的規制をかける!」姿勢を明確にしないといけない。でないと、この国は、データ監視は当り前、中国型の権威主義国家に変容するのを防げない。

2024/01/22

デジタル化に遅れた共通番号(マイナンバー)制度反対運動再興の課題

庶民のカネや財産は共通番号(マイナンバー)制度で監視するのが当り前。一方で、政治のカネや財産の番号管理はしない。不透明で、やりたい放題。こんな庶民感覚を欠いた、不公正で無責任な政治の実態が露わになり、国民・納税者はあきれている。

政治家がイヤなものは庶民も嫌なのが分からないのだろうか?役人主導、IT企業と結託した血税浪費のデータ監視国家構想を放任する政治は、民主政治とは相容れない。国民のプライバシーを大事にしない権威主義国家は要らない。

わが国の共通番号(マイナンバー)制度には、次のような大きく3つの狙いがある。

  1. 国家が居住者全員に12ケタの個人番号を振り、現実空間での税・社会保障業務でのリアルID(本人確認)に使うこと。

  2. ネット空間に展開される電子政府/電子自治体(e-Gov/マイナポータル/マイナプラットフォーム)における税・社会保障業務で、“電子番号”ともいえるICチップ(電子証明書の符号)を官製デジタルID(本人確認)に使うこと。

  3. マイナンバーICカード(マイナICカード)、つまり、顔写真つきの国民登録証(公定身分証明書/国内パスポート)の携行を求めること。

デジタル化(DX=デジタルトランスフォーメーション)が急激だ。経済取引はもちろんのこと、国や自治体の税・社会保障業務が、従来の目に見える「現実空間(リアル空間)」から、目に見えない「ネット空間(デジタル空間/オンライン空間)」にまで大きく拡大している。

ところが、共通番号(マイナンバー)制度反対運動は、デジタル(DX)化の大津波に押し流されてしまっている。

共通番号(マイナンバー)制度反対運動のガラパゴス化・陳腐化は残念だ。所詮、デジタル大嫌いな市民によるムシロ旗運動だから仕方ないのかも知れない。

  1. 「官製のデジタルID」の民間分野への汎用/拡大利用の危険性については、ほとんど斬り込めていない。そもそも、「デジタルIDとは何か」がわかっていない。「官製のデジタルIDと民間のデジタルIDの違い」も分かっていない。これではサステナブル(永続的)な運動は至難だ。

  2. 生体認証式マイナICカードの使用のオンライン健康保険資格確認システム(Mシステム/マイナ保険証)」導入による位置確認・電子データ収容所列島化問題についても同じだ。市町村の救急業務にマイナICカード/マイナ保険証を使うプランも浮上している。こうしたプランは、民営化が進む救急業務、医師の守秘義務、刑法の秘密漏示罪(134条)などの視点からも大問題である。

街頭の監視カメラは問題にするが、もっと危ないMシステムに対してはほぼ無頓着である。“木を見て森を見ず”の感は否めない。

わが国の電子政府/マイナポータルでは、公開鍵(PKI)式電子証明書搭載のICカード(マイナICカード) を使う。だが、グローバルにみてもICカードを使う電子政府モデル(政府ポータルサイト)は、すでに時代遅れだ。ガラパゴス化(ガラ系化)している。なぜならば、このモデルでは、ICカード(マイナICカード) を取得しないと、国民は電子政府(政府ポータル)サイトにログイン(リモートアクセス)できないからだ。 

いまやスマートフォン(スマホ)やダブレットなどモバイル端末全盛の時代だ。モバイル端末には、ICカードやICカードリーダーは不向きである。

仮に公開鍵(PKI)式の本人認証のためのICチップを使ったデジタルIDの採用を継続するにしても、ICカード搭載ではなく、スマホに直接搭載するのが世界の流れである。

加えて、ICチップ(電子証明書)の有効期限が5年で、その都度ICカードを更新しないといけないのも、血税の無駄遣いだ。利便性もよくない。官製のデジタルID/マイナICカードの発行は止めないといけない。スマホに直接搭載し、スマホを持たない人には紙の通知カードをプッシュ型で交付することで十分なわけだ。大胆な発想の転換がいる。

わが国の個人(所得税)の電子申告(e-Tax)では、国税庁のポータルサイト(ウエブサイト)にログインする際に、デジタル ID として、PKI(公開鍵・電子証明書)式に代えて、ID・パスワード式の選択ができる。ということは、データセキュリティ評価の面では、PKI(公開鍵・電子証明書)式も、ID・パスワード式も変わらないということだ。

ところが、政府は、官製のデジタルID(PKI)を、税や社会保障のみならず、民間取引にまで自発的利用を広げようとしている。権威主義国家的な政策で解せない。市場主義を核とした民主制国家には似合わない。

アメリカなどのように、民間活力ファーストで、市場で磨かれた簡素なデータセキュリティのしっかりしたID・パスワード方式の民間のデジタルIDの活用に舵を切るべきだ。

また、人権ファーストの視点から、カナダのように、共通番号が税・社会保障分野以外に不要に拡大しないように法的歯止め策を講じないといけない。

国民・納税者は、共通番号(マイナンバー)制度を濫用したデジタルビッグブラザー(デジタル監視国家)を望んでいない。

共通番号(マイナンバー)制度反対運動は、デジタル(DX)化の大津波に耐えられるように、リスキリング(学び直し)が要るのではないか?

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